【FEATURES】New Found GloryのドラマーCyrus Bolookiがドラム目線で語る、Newアルバム「Makes Me Sick」全曲解説
バンド結成20周年という節目の年にリリースされたNew Found Gloryの9枚目となるNewアルバム「Makes Me Sick」。アルバム収録の全10曲をドラマーCyrus Bolookiがドラム目線でたっぷり語ってくれました。かなり細かい話もしてくれているので、NFG好きなドラマーはもちろん、ポップパンク好きなバンドマンは必見です!バンドをやっていないからイマイチよく分からないという人も、これを読みながらドラムを意識して聴いてみれば、いつもとはまた違う発見ができて、新しい音楽の楽しみ方に出会えるはず!ぜひ曲を聴きながらBolookiの全曲解説をご堪能ください!
“Your Jokes Aren’t Funny”
この曲はアルバムの1曲目というだけではなくて、アルバムのために作った最初の曲であり、最初のリフなんだ。僕たちはスタジオに入る1年くらい前にサウンドチェックでこのリフをジャムり始めた。僕はメインのビートはストレートなものが大好きなんだけど、もっと弾んだ感じを出すために裏拍にスネアのアクセントをちょっと加えたんだ。この曲をレコーディングした時、シンバルのダイナミクスをキープするために、ハイハットやライドシンバルを4分音符に聞こえないように、しっかりと8分音符で鳴らすことに気をつける必要があったんだ。僕はそうなってしまう傾向があるからね。あと、最後にこの曲のエクストラ・テイクをレコーディングした時、ビートを前ノリにしようとして、サウンドを硬くするためにイスにまっすぐ座っていたんだけど、最終的に僕たちが決めたリズムパターンは、自然ですごくストレートだけど人間味があるものにしようということになって、最初に作ったパターンでいくことになったんだ。
“Party on Apocalypse”
この曲には本当にクールなことがいくつかあるんだ。まず、この曲のスネアはアルバムの他の曲よりも高くチューニングしてある。それは僕たちにとって、僕たちが聴いて育ったSnapcaseやHelmetのようなバンドをちょっと彷彿とさせるものだったんだ。この曲のサウンドはそのバンドたちとは全然違うけどね。2つ目は、この曲のサビにスプラッシュ・シンバルを入れたこと。僕はこの曲のタイトなギターが大好きで、シンバルほどは大きくないけど、ライドシンバルのカップよりは大きいアクセントを入れたかったんだ。あと、この曲は裏拍のリフが繰り返されているから、できるだけ左手でクラッシュシンバルを叩いたりアクセントをつけるようにして、ストロークが右手に戻る時にダブルストロークを使うことなくグルーヴをキープできるようにプレイしたよ。
“Call Me Anti-Social”
この曲はアルバムの中でも僕のお気に入りで、Tom Lord-Algeに最初にミックスしてもらった曲なんだ。Tomはこの曲を最高なものにしてくれたよ。本当に多くのバンドがドラムサウンドをより大きく目立たせるためにドラム・サンプルを使っているこの世界で、アルバムのサウンドを最終的に大きくするために僕たちがTomに渡した、オーガニックでリアルなドラムサウンドだけを使って彼はミックスをしてくれたんだ!イントロと間奏で鳴っているキーボードのメロディーに合わせるために、ハイハットを少しオープンにしてアクセントをつけて、その後のギターソロ・パートで同じアクセントでクラッシュシンバルを叩いたんだ。あと、サビの後半に入れた4つ打ちと、キックとチャイナ・シンバルを使って作った、各サビの最後のフィルが大好きだよ。
“Happy Being Miserable”
1stシングルになったこの曲は、このアルバムで最初にできた曲なんだ。去年のWarped Tour中にこのアルバムのための曲をたくさん書いたんだけど、僕がラップトップ用のレコーディング機材をバスの後ろにセットアップして、Chadが曲の元となるギターとベースを録音して、それから一緒にToontrackのSuperior Drummerを使ってドラムパートを作って、歌詞を書くためのデモを作った。この数年Superior Drummerを使ってドラムパートを書いているんだけど、いつもスタジオに入る前に時間を作ってライヴの設定で曲を演奏するんだ。これが素晴らしいのは、違うパターンを試して時間を無駄にしたり、叩き方を変えてまたパートを覚え直さなきゃいけない心配をしなくて良くなるってことだね。それに時々、すごくクリエイティヴで面白い、心に残るフィルやパターンが出てくることもあって、その時はレコーディング中に叩き方を覚え直すんだ!あとこの曲には2つほど伝えておきたいことがあって、この曲には僕が大事にしているブラスのダイカストフープを付けたTAMAのBell Brassスネアっていう、Metallicaの「Metallica(ブラックアルバム)」やNirvanaの「Nevermind」でも使われているスネアを使っているんだけど、僕はこのスネアは大好きなんだ!あと最後のサビに戻るブリッジで、スネアでヘルタ(叩き方)を取り入れているんだけど、それも大好きだよ。僕は古典的なトレーニングをしてきたドラマーじゃないから、そのパターンやビートの名前も知らずに、たまにそういうことをやるんだけど、それがクールに聴こえるのであれば、それを頑張ってやってみるんだ!
“The Sound of Two Voices”
これは僕たちにとって完全に新しい方向性の曲なんだけど、この曲ができた背景にはクールな話があって、アルバムに入れるべきだってことが分かっていたから、作曲もすごく気楽でオーガニックだった。アルバムのプリプロダクションをやっている時、ランチから戻ったある午後にこの曲の基本的な部分を書いたんだ。みんなで車に乗っている時にラジオからPaul Simonの “You Can Call Me Al” が流れてきて、それがきっかけで似たようなリフからジャムり始めた。僕はその曲のドラムからインスピレーションを得るのが良いんじゃないかと思って、各小節の4拍目にだけスネアを入れて、ハイハットでグルーヴを作った。Aメロを書いた後、そのテーマをサビとブリッジにも取り入れて、小節の4拍目を強調するようにしたんだ。あとこの曲のレコーディングの仕方も大好きで、この曲はドラムのレコーディングで最後に録った曲なんだけど、80年代のキットのようにサウンドをものすごくタイトにするために、ドラムをすべて布で覆って、特別なバッフルを取り寄せたよ。あとこの曲の終わりのビートには満足しているんだ。普段の僕ならやらないような、裏拍にライドのカップでアクセントを織り交ぜることができたからね。
“Blurred Vision”
この曲は楽曲制作のかなり早い段階でできた曲なんだ。スローなテンポの曲だけど、この曲では大げさにプレイしないようにしたよ。僕は音楽と歌詞が映えるようにしたかったから、フィルも最小限にして、少なくともメロディーや他の楽器のじゃまにならないようなところにだけ入れるようにした。この曲の鍵はイントロやサビのスネアで、ギターのリズムをそのまま取り入れているんだ。もしこれがなかったら、曲の聴こえ方が全然違っていたと思うよ。あと曲の終わりの表拍にスネアを入れているところでは、コードが変わるタイミングでクラッシュシンバルでアクセントを入れて、ビートが変わったとしても、この曲のメインのリズムは保つようにしたんだ。この曲には僕が所有しているまた別のクールなスネアを使っているんだけど、何年か前にドラムテックであり師匠のMike Fasanoからのアドバイスで買ったTamaの8×14のスパースタースネアっていうやつなんだ。彼も同じものを持っていて、彼はGuns N’ Rosesの “November Rain” で実際にそれを使っているよ。
“Say It Don’t Spray It”
このアルバムの中で一番クールなグルーヴだと思うし、この曲のサビが大好きなんだ。この曲のメインのリフをジャムっていて、僕は同じビートで色々なプレイ方法を考えていた。その時にハイハットをオープンにして16分でプレイするのを思いついたんだ。あとリフの3回目にギターのコードに合わせてクラッシュシンバルでアクセントをつけるところが好きだね。ここにちょっとした秘密があって、曲の始めと途中のシンバル・パターンは重ね録りしているんだ。なんでそうしたかって言うと、ちゃんときれいに音が出ているかと、曲をリードするフィルが、そのフィルに変化を与えるであろうシンバルのダイナミクスがなくてもパワフルかどうかを確かめたかったからだよ。あとこのアルバムの中でお気に入りのフィルがこの曲にあって、それは2回目のサビに入っているフィルなんだ。プリプロダクションで曲をジャムっている時にできたフィルなんだけど、バンドとプロデューサーはなんかクレイジーなプレイだって言ってたよ。このフィルは、僕がドラムを始めた頃にラジオでよく流れていた縦ノリの曲、Spin Doctors “Two Princes” がなぜか思い浮かぶんだ。
“Barbed Wire”
アルバムの中でもお気に入りのドラミングがこの曲にはあるんだ。この曲はクールだけどパワフルな4つ打ちで始まるんだけど、キックドラムの4つ打ちをキープしながらギターのリードに合わせてフィルを入れるところが好きなんだ。この曲のAメロは、僕たちが初めてのツアーをスタートした時にバンの中でいつも聴いていたBraidの「Frame and Canvas」からインスピレーションを得ていて、そのアルバムの1曲目 “The New Nathan Detroits”のイントロとAメロが最高にクールなビートなんだよ。この曲のAメロのビートを思いついた時、完全にあのヴァイヴスを感じたよ。あとブリッジのスネアのグルーヴが好きで、ベースに合うようにアクセントを付けたんだ。
“Short and Sweet”
この曲のAメロが気に入ってるんだ。各Aメロを違うパターンで叩いているんだけど、このAメロはベースとドラムがグルーヴしているところが好きでね。ドラムパターンをちょっと面白くしたかったのと、あまりストレートになりすぎないようにするために、ハイハット、ライドシンバル、スプラッシュシンバルを使って、間にアクセントを加えるのが楽しかった。それ以外は僕が普段やっていることをやった、かなりスタンダードな曲だね。Aメロではハイハットを使って、サビに向かって徐々にクラッシュシンバルを取り入れて、盛り上げていくんだ。僕たちがこの曲を書いた時、僕はずっとSmashing Pumpkinsの “Today” が頭にあった。この曲のすごく歪ませたギターの音がそう思わせたんだと思う。サビのスネアワークとフィルは、Jimmy Chamberlainがあの曲で叩いた、彼のキャリアの中でも素晴らしいドラミングのノリを、ちょっと取り入れているんだ。
“The Cheapest Thrill”
この曲はスネアがすべてで、僕のお気に入りの70年代のLudwigのアクロライトを使ってレコーディングしたんだ。スネアパターンの通常の叩いた音と、アクセントとして叩いた音に、明確な違いが出せているかを確認するために集中しなきゃいけなかった。ミックスしてまとめた時にダイナミクスを残すためにね。あとサビで本当にクールなことをやっていて、自分が昔叩いたドラムパターンのネタを引っ張ってきて、そこに使った。アルバム「New Found Glory」収録曲 “Black and Blue” でやっているのと同じフィルをサビに入れたんだ。それは露骨にすぐ分かるものではないんだけど、もし誰かからインスピレーションを得るなら、自分自身が良いんじゃないかって思ったんだよ!あとイントロと同じビートで曲を終わらせるっていうアイデアを思いついた。だからみんながアルバムを聴いて、最後に僕のドラムに気づくのが楽しみなんだ!