【FEATURES】大阪発メタルコアバンドSUGGESTIONS, メンバー本人が紐解く1stフルアルバム「Another Heaven, Our Catharsis」全曲解説
(Photo L→R : Kei 〈Gt.〉 / Owen 〈Gt.〉 / Mariko 〈Dr.〉 / NiiK 〈Vo.〉 / Kato 〈Ba.〉)
これまでAfter The Burial, I Declare War, Loathe, Alpha Wolfなど海外アーティストとの共演も数多く経験している大阪発メタルコアバンドSUGGESTIONS。昨年11/30にフィジカル先行でリリースされた1stフルアルバム「Another Heaven, Our Catharsis」は限定店舗(礎、ディスクユニオン)での販売ながら好調なセールスを記録しており、昨年末にはApple Music, Spotifyでの配信もスタートしています。
ホラー映画から影響を受けたというダークかつ狂気に満ちた独自の世界観で注目を集めている1stフルアルバム「Another Heaven, Our Catharsis」全11曲を、メインコンポーザーでギタリストのOwen, そしてボーカリストNiikがたっぷり語ってくれました。すでにアルバムをチェックしている人も、そうでない人も、ぜひ彼ら自身の言葉で紐解かれた解説を読みながら楽曲を聴いてみてください! Loathe, Sworn In好きにオススメ!
はじめに
SUGGESTIONSの楽曲は基本的にギタリストのOwenが一人でデモからプリプロまで作成を行い、それを他のメンバー全員で編曲し完成させています。-Owen
1. Another Heaven
まさに物語の幕開け、と誰が聴いても感じるような内容を意識して書きました。この曲に関してはヴォーカリストのNiikと一緒にスタジオへ入って作曲しました。前作EP(「Confine Your Tongue」)に収録されている “LET ME IN” が次の段階になったらどうなるかを考えた結果こうなりました。-Owen
我々が魅せる “もう一つの天国” 皆を迎える開演の曲です。短いですがオペラやポエトリーリーディング的なアプローチまで組み込んだ豊かな曲だと思っています。-NiiK
2. MAMA
SUGGESTIONS流nu metal第一弾です。「超絶シンプル構造かつアグレッシブに」がモットーです。nu metalっぽい曲を書くと多くの人はあまり新鮮味のない結果になっていると日頃から感じています。そのため僕らはどうすれば過去の焼き増しではなく新しく音が聴こえるかを念頭にこの曲を完成させました。十数年以上メタルとともに育ち、培った僕のノウハウが散りばめられています。-Owen
極めて幼稚な歌だと思っています。アホみたいに口を開けて”愛をよこせ”と喚き散らかしている。そんな歌です。今作の中でもっともグルーヴ感のあるボーカルワークになったのではないかなと。1:29〜のブレイクも、よくあるワンフレーズ叫んで落とす、なんてつまらない事はしたくなかったので子供たちに歌ってもらいました。-NiiK
3. E.S.W.Y.S
僕の好きなジャンルにハードコアライクなデスコアがあります(正確なジャンル名はわかりません笑)。この曲はそのようなジャンルの新たなアンセムになりたいと思い作曲しました。結果的にジャンルに当てはまらないダンサブルな1曲になり、大変満足しています。またギターソロの案が非常にユニークで気に入っており、ギタリストのKeiと互いにフレーズ案を出し合い最終的に彼が書いたギターソロを採用しました。彼は天才です。-Owen
誰かにとっての聖歌、信条は他の誰かにとっては呪いかもしれない。沢山の言葉がグルグルと全身にまとわりつくような感覚、呪詛のようなイメージを持って歌いました。一瞬入る日本語詞は、普段の何気ない言葉たちの中から不意に現れる”ゾクっとする”ような感覚を表現したくて入れました。-NiiK
4. VANITAS
low Eチューニングの曲です。今回実は2種類のチューニングを設けて作曲をしています(drop Gとlow E)。この曲はすごく不思議な曲ですが簡単に言うとSUGGESTIONS流のダウンテンポってやつです(正直もうあまりダウンテンポという単語を使いたくないのですが笑)。ただダウンテンポが好きだったから言えますが、ダウンテンポってめちゃくちゃつまらん曲もあったりします。その中でいかにアイデア凝らして「今まで無かったものを作るか」という想いが念のようにこもっています。ベーシストKatoが編曲した教会音楽のようなバックコーラス(クワイア)サウンドも非常に効果的に働いていて120%の出来となり嬉しいです。-Owen
どうあがいても一生消えることの無い感覚に捧げた賛美歌です。天を仰ぎたくなるような広がりのある歌を意識しました。Carpe Diemと並び、クワイアとのアンサンブルでこの上なく荘厳な世界を作れたのではないかと。-NiiK
5. Hunger Affection
僕はtrap musicも好きでよく聴いています。特にお気に入りのアーティストはNick Prosperで、初期の彼の楽曲でtrapにハマったのをよく覚えています。そんなときに「僕もtrapやりてえ!」という感情だけで新しく出会ったものに自分が持っているものを混ぜたらこの曲が完成した、という経緯があります。実は数年前からこの曲は完成していたので、trap自体の流行り廃りが早いのもあり世間の状況も変わりつつありますが、それでも全く色褪せることなくアルバムへも良い味付けが出来ている非常に完成された1曲だと思います。-Owen
同期とボーカルのみの楽曲。“MAMA” の登場人物の独白、懺悔のような曲と考えています。俺もIC3PEAKやGHOSTMANEなどのアーティストが好きでtrap曲への憧れがありました。ただ”ラップ”をするのはNiiKの表現では無いなと思ったのと、流行りに乗るだけのチープなものには絶対したくなかったので、独り語りをするイメージで歌を入れました。-NiiK
6. O.LILY
SUGGESTIONS流nu metal第二弾です。こちらは “MAMAと” は違い、どこまでも落ちていくような心地よいスローテンポと耳に残るのに口ずさむのは難しいという不思議なフレーズを有している楽曲です。それらのジャンルを通ってきたからこそ書ける曲、と勝手ながら自負しています。-Owen
曲名はORANGE LILYの略。花言葉は”憎悪” 嘆くようなイメージで”オー.リリー”と呼んでください。耐えて耐えて耐え忍んで来た心優しい人間が、とうとう堕ちてしまう曲。個人的に最もヘヴィな曲だと思っています。サウンドではなく世界観として。”聴かせる”歌を特に意識した曲であり、0:20や1:33の抑揚はかなりこだわりました。Mariko曰くこの曲はバラードらしいです。同感。- NiiK
7. DICTATOR
シングルで発表済みの楽曲でしたので全パートを再録する形で改めて発表しましたが、取り憑かれたような全体の完成度を再確認させられたため、機軸となるものは変えてません。「この部分がシングルと違う!」と聴き手側が気づいて議論してくれるような景色をニヤニヤしながら眺めていたいです。そして “DICTATOR” はSUGGESTIONSを一つ上の段階に引き上げてくれた意味でも大切な楽曲なのでよりみんなに愛されるといいなと思います。-Owen
独裁者を非難する歌は多いと思いますが、これは独裁者側の歌です。結局他人なんか信用ならない、と自分の目と耳を潰してしまうような歌。”I was very happy”というフレーズはAHOCの中で最もエクスタシーやカタルシスを感じる瞬間だと思います。再録verで、リフを聴かせるために敢えて歌のフレーズを抜いたり、アグレッシブな部分は更に足し算したことによって一層グルービーでハッピーな曲になりました。-NiiK
8. COLDRED
low Eチューニングの曲です。実はこの曲はアルバムの中で1番最後に完成しました。僕がSUGGESTIONSの楽曲を作曲するときにまず考えるのが「いまバンドにはどんな曲が足りていないか」です。そんな中で僕は難解な曲も多く、やはりポップでダンサブルな楽曲が足りていないと感じたため、思い描いたままに書いた内容がこの楽曲になります。1番ラクに書くことができたのを覚えています。みんなが踊ってくれるといいな、という気持ちです。-Owen
冷酷な人間たちのテーマソングです。シンガロングできる曲や、している人たちが羨ましいなぁという気持ちがあってSUGGESTIONS史上最もキャッチーな歌を作りました。陰鬱でドロドロしたフレーズを馬鹿みたいにみんなに歌って欲しいです。本心では誰も他人に関心はないし、自分以外どうなろうが知ったことではない。そんな曲を”みんなで”歌いましょう。-NiiK
9. SERPENT
“DICTATOR” 同様に全パート再録した楽曲です。この曲を聴いてSUGGESTIONSはデスコアだな、と思う方が多いのではないか、と個人的には思っています。たしかに僕の好きな要素を”やりすぎなくらい”詰め込み過ぎた結果自然とこのような形になったと思います。ブラックメタルもやりたいし、モッシュコアもやりたい、そんなわがままな曲です。-Owen
誘惑するものの象徴としての蛇。蛇に魅入られて犯してしまう罪と、誰にも知られず体を蝕んでいく毒の物語を歌っています。2:44からのパートは理性を失って落ちていく様を表現しています。-NiiK
10. CARPE DIEM
low Eチューニングの曲です。この曲には言葉としてのテーマがきちんとありまして”死生観”について書いた曲です。僕は普段歌詞を書かないのでいかにその音ひとつひとつで「死」であったり「生」というものを連想させるような表現できるか、について真剣に向き合った結果に辿り着けた曲です。また、それらは映画音楽から培ったものでもあります。-Owen
死ぬことよりも本当に恐ろしいのは無駄に生きながらえて魂を腐らせることである。美しいアートを残して消えていった先人たちを讃える歌だと考えています。散々使い古されたある有名なフレーズを敢えてこの曲には組み込んでいます。“SERPENT” で徹底的に落ちた後にこの曲が来ることによって、聴き手の感情は完全に破壊され、もうAHOCの前の世界には戻れなくなります。-NiiK
11. Our Catharsis
アルバムが終わる。しかし、まだまだ物語は続く。人は言葉がなくても音のひとつひとつでそれらのように伝えたい事柄を伝えることができると思います。そして、この曲は僕の中で遂に映画音楽をこちら側の世界に持ってくることが出来た成功例だと考えております。-Owen
インスト曲ではありますが、余韻で歌っていると考えています。“Carpe Diem” までの濃厚な時間の余韻がゆっくりと曲の中で一緒に流れて溶けていく。SUGGESTIONSは確かに狂気を表現しているのですが、所謂デスコアやメタルコアというジャンルでよく耳にする「狂ってる」とか「強い」とかいう感想で終わってしまうのは大きな間違いです。この曲でもっと多くの人がそれに気づいてくれるはず。泣いてくれたら嬉しいです。-NiiK
SUGGESTIONS「Another Heaven, Our Catharsis」
1. Another Heaven
2. MAMA
3. E.S.W.Y.S
4. VANITAS
5. Hunger Affection
6. O.LILY
7. DICTATOR
8. COLDRED
9. SERPENT
10. CARPE DIEM
11. Our Catharsis