【FEATURE】イタリア再燃 〜イタリア・バンド・リリース紹介〜
本国の輸入盤は流通がない為にほぼ入荷不可能ながら、これまで数々のレーベルがしっかり国内盤をリリース&プロモーションする事によって、ここ日本でも確固たる人気を誇るバンドが数多く。そう、VANILLA SKYが切り開いたイタリアのパンクシーンはその後MELODY FALLが現れた後2007年辺りから続々と素晴らしいバンドを輩出してきたが、ここ数年、若干ポップパンクのトレンドが変化してきた事によってか全盛期から少し落ち着きをみせた感も否めなかったのは事実。しかししかししかし!しかしながらここ最近、イタリア出身のバンド達の非常に良質なリリースが同時期にあったので今回まとめて紹介します。
まず一発目はTHE TRUTH「You Are The Sound You Make」。前述したMELODY FALLのVocalであるFABRIZIO PANEBARCOが始めたソロ・プロジェクト。MELODY FALLが最新作「Virginal Notes」で鳴らされた、これまでのサウンドを大きく覆すラウドなサウンドとは対極にあるピアノをフィーチャーした美しいサウンド。FABRIZIOのメロディーメーカーとしての才能を全面に出した非常に興味深いサウンドとなっています。これまでMELODY FALLをリリースしてきたRADTONEから国内盤でリリースされています。Pop PunkやMELODY FALLファンだけでなく、耽美系ロック・リスナーにも是非聴いて欲しい一枚。
続いてはLAST DAY BEFORE HOLIDAY「Fighting the Hard Times」。これまでリリースされた二作が国内盤リリースされ、日本でも人気のあるバンドの一つである彼等の最新作。アートワークからも推測出来る通り、これまでのハッピーなPop Punkからやや変化。モダンなオルタナティヴ要素を少し取り入れており、バンドのネクストステップ感が満載。バンドサウンドのアルゴリズムに進化はあったものの、ヘヴィなギターやそこにのるメロディーは変わらず非常にキャッチー。”On My Own” や “Believe”、”Nothing Left to Say” の疾走感や “Can You Say the Same?” のイタリアらしいダンサブルな楽曲は非常に秀逸で、エレクトロ要素は全く無い訳ではないながら、だいぶ影を潜めていながらこういった印象を持たせる辺りは相変わらず上手い。現在の所iTunesのみでのリリースだが鬼オススメ。
次はLAST DAY BEFORE HOLIDAYと同じく国内盤がリリースされたRED SUMMER TAPE「Eargasm」。前作から約3年振りという非常に長いタームで時間をかけて制作されただけあって、“音楽によるオーガズム”というスラングを冠としたニヤリとするタイトル含めて素晴らしい一枚になっている。これぞRED SUMMER TAPEというべき彼等のキャッチーさが全面に出た “J Love” や、サザン・ロックのリフと未来感あるメロディーラインを見事に融合した新境地 “Five Man Army” といった2012年に先行で発表された楽曲達も勿論収録。前作のPopcore要素、そして上のLAST DAY BEFORE HOLIDAYと同じくエレクトロ・サウンドはやや封印したオーセンティックなPop Punkとなっているが、彼等もヘヴィなギターリフは健在。今作随一のキラーアンセム “Neckbreaker” や “Victory” といった楽曲で聴けるシンガロング必至のコーラス、前作の名曲 “Saturday Night Girl” の続編とも言うべき “Own the Night” のキラキラとしたダンサブルな楽曲といい、正当進化というべき大充実の一枚となっている。前作が好きな方は間違いなくずっぱまる事でしょね。僕も現在ヘビロ中!こちらも現在の所iTunesのみでのリリース。同じくiTunesではBRUNO MARSの名曲 “Locked Out of Heaven” のカバーも購入出来るので是非。
最後はTHE ELECTRIC DIORAMA「Antimatter」。2009年に国内盤がリリースされ、当時MY LAST FALLと共にイタリアのパンク/スクリーモ・シーンを押し上げた立役者が久しぶりに新epを発表しています。元々はメンバーのHelioがVANILLA SKYのVinxと共にお遊び的に立ち上げたプロジェクトであったバンド。バンドといっても現在はVocalのDude、Helio(G/Ba)、Katoo(Synths)と3人になってしまっている様だが、そこは元々メインメンバーの3人だけあってそのサウンドはさすがの一言。よりエレクトロ感を増しながらも、イタリアらしい哀愁あるメロディー。スクリームはないものの、最近同じく新epのリリースのあったドイツ産HIS STATUE FALLSの1stにも通じる煽動的且つ焦燥感あるプロミングが印象的な “The Omega Project” や “Oxygen”、DubstepまではいかないながらENTER SHIKARI辺りとリンクする “Clarity” 等、マキシマムからミニマルまでエレクトロのサウンド自体も先鋭的。2012年に先行でリリースされたシングル “Goon” は収録されていないが、最後のタイトル・トラックでありインストトラック “Antimatter” の荘厳さから象徴される様にコンセプチュアルな世界観で統一されている。本作も現在の所iTunesでのリリースとなっている。
以上今回紹介するのは4タイトルだが、LAST DAY BEFORE HOLIDAYやRED SUMMER TAPEと共にイタリアのメロディック御三家と呼ばれるNOTIMEFORも精力的に活動。SOLDIERS OF A WRONG WAR等、注目の新世代も続々と登場しており、先日国内盤もリリースされたADAM KILLS EVEや新作発表間近と噂されるMY LAST FALLを筆頭としたスクリーモ・シーンも含め、まだまだこれからも注目だ。
テキスト:鎌田 裕司 a.k.a. わいけ