【FEATURE】Can’t Bear This Party Japan Tour 2014ライヴレポート@1/12 渋谷O-Nest
ここ日本でもChunk! No Captain Chunk!のブレイク以降盛り上がるPopcore/Easycoreシーンにおいて、重要バンドの一つであるCan’t Bear This Party。そんな彼等を国内外問わず世界中の良質なバンドを紹介し続けるRomantic Nobita Recordsが招聘し、待望の初来日が実現した。今回は国内勢も錚々たるメンツが出演した、ツアー5日目のレポートをお届けする。
トップバッターはCrystal Lake。いきなり彼等が一発目という事からも、この日がどれだけ層の厚いアクト陣であるかが分かるであろう。荘厳なSEから一気にトップギアに入る最高クラスのモダンNew Schoolサウンドに、初っ端からオーディエンスもピットを作り、凄まじき大爆発っぷりで応える。Liveをみる度にその強靭さとフットワークの軽い、スポーティーなアグレッションが増していく。スラッシーなパートとシンガロングしまくれるパートが次々と繰り広げられる新曲も披露。一番手からダイブの起きる事は中々ないよなぁ、と思わずニヤニヤしてしまう程の圧倒的パフォーマンスと音圧。ラストは壮絶な大パイルオン祭りで締めた。
続くはAll Found Bright Lights。昨年11月に全国流通の1st作リリース後、We Are The Champion$と共に新世代Easycoreシーンから頭一つ抜け出した名古屋産。強烈なブレイクダウン等、新世代ならではのハードコア要素をふんだんに盛り込みつつも、打ち込みを導入したキャッチーなPop Punkをベースにしたサウンド。Crystal Lakeの後という事もあり、様々な面でレベルの差はあったものの、今回のツアーを全日程帯同してきただけあり、前回みた時に比べ大きく進化していたのは間違いない。まだ若いバンドだ、ここから場数を踏んでいく事で勢いだけでなく、さらなる整合感も持ち合わせた良いバンドになるだろう。
三番手は長い事東京のPop Punkシーンを支えてきたFor A Reasonの2014年一発目となるLive。出だしのストローク1つで滲み出る清涼感。ブレイクダウンもスクリームもない、これぞPop Punkだと言わんばかりに届けられるオーセンティックで伸びやかなサウンド。そしてそこかしこに迸るメロディックハードコアに通じる熱さが共存する、本当に素晴らしいバンドだ。
事前に多少予想は付いていたが、この日の濃すぎる面々の中でも間違いなく異彩を放っていたのは、次に登場したキバオブアキバだろう。耳に残るエレクトロ、彼等らしい歌詞やMC、サイリウムを使ったオーディエンスの「ヲタ芸」+「モッシュ」=「ヲッシュ」…etc、飛び道具も多数あるバンドだが、それを差し置いてもボトムがしっかりとしたタイトなドラミング、タッピングを多用したテクニカルなギターソロ&リフ、メロデスばりのスクリーム。バンドとして丸裸にしたとしても、サポートメンバーとの息もぴったりな個人個人の卓越した演奏と存在感溢れた唄声が光る。様子見だった後方のオーディエンスも最終的には巻き込むパフォーマンスとサウンドは、今年もさらなる大きなフィールドで活躍する事は間違いないと確信させられるものだった。
続いてはRomantic Nobita Recordsも大きくサポートし続けてきた日本のパンク・レジェンドNamba69が遂に登場。ハイスタ時代を踏襲したファストな楽曲ながら、より近年のモダンPop Punkからの影響を柔軟に取り込んで来た、3ピースとは思えないズ太いベースラインを全面に出した安定感抜群のサウンド。「みんなハイスタ好きっていってくれて嬉しいんだけど、もう今のPop Punkはそんなの通り越してすげぇ事になってる。今もっとも熱いのは間違いなくPunkだし、俺等もその波にのっていく!」と、昔も今も変わらず等身大にキラキラと目を輝かせて語る難波氏。新作もそういった思いを反映させた作品となるようなので楽しみだ。Daft Punk「One More Time」のカバーを演奏し、サビを「Nobita〜!」と替え歌したり、皆が期待する「Stay Gold」を演奏したりと、エンターテイメント性と遊び心満載。貫禄のステージだった。
いよいよ大トリは難波氏からも絶賛されるCan’t Bear This Party。前述の通りChunk! No Captain Chunk!に続く、フランス最強の刺客が満を持しての来日だ。ヘヴィなサウンドを軸にしながら、Chiptune要素全開の8bitの打ち込みを大胆に導入したキャッチーなPopcore/Easycoreを奏でる彼等。何とツインVocalがフロアにシンセ/キーボードを置き、残りのメンバーがステージ上で演奏をするという、この手のバンドに関わらず、まず見かけないフォーメーションに驚かされる。このサウンドでこんなにもアーティストを間近で体感出来るLiveにオーディエンスもテンション上がらない訳はなく、一曲目“What Would You Expect From Guys Like Us (Intro)”から名曲“So Quarrelsome”への流れでモッシュとシンガロングの嵐が大炸裂。続く“Ain’t No Princess Down Here”でも止む事なくさらに会場の熱気は上がる。
そして2013年発表になった新曲“Lil Bowotami”や2012年発表の“Glen”、“Raymond gave me the best”といった1stフル作「Ain’t No Princess」未収録の楽曲を次々と披露。エフェクトは紛れもなく8bitサウンドではあるものの、音源以上にベースラインの強い打ち込みは破壊力が凄まじく、タイトなドラミングと何音下げたらこんな音出るんだっていう程ダウン&ドロップ・チューニングされたギターが被さる事により、低音が腹に突き刺さる。再び1stフル作からのファストでアグレッシヴな“City’s So Sad”を挟み、個人的に最も聴きたかった未収録曲“I’m not your lolifriend”へ!疾走感とキャッチーながらセンチメンタルなメロディーライン、エモーションがかなりのプログレッシヴ度合いで融合した最高な一曲。この曲に限らず、同シーンのバンドと比較しても結構な変則リズムと展開をみせる楽曲に、疾走パートやブレイクダウンを混ぜ込み演奏していた彼等。それに完璧なまでについていき、完璧にシンガロングし、パイルオンしているオーディエンス達を見るだけで、どれだけ音源を聴き込みながら切望していたかが良く分かる。会場のヴォルテージは上がる一方の中、本編は再び1stフル作より“Yoko Dances Tonight (Never Let You Go)”からの“Talk To The Phone Tone”と、鉄板の流れで締め。アンコールは彼等の持ち味が全て詰まった“Sinking Ship”一曲という清さ!フロアもステージも関係なく、マイクを持って突っ込みオーディエンスとシンガロングしている姿には胸熱くなった。
確かにPopcore/Easycoreというシーンでの括られ方のするサウンドであり、
どうしても同郷フランスという事でChunk! No Captain Chunk! と比較されがちだが、ヘヴィでハイブリッドなサウンドプロダクションを追求しているChunk! No Captain Chunk! に比べ、彼等は音源以上に人間臭くて良い意味でのチープさを持ったバンドなんだなと、この日のLiveをみて感じた事だ。8bitサウンドを武器にしているからではなく、等身大でエモーショナルな人柄があるからこそ、ステージングの其処彼処に滲み出た雰囲気とそれを受け止めるオーディエンスの溢れる笑顔が、温かな空気感を作り出していたのであろう。DIYでやる事の大変さもあったとは思うが、それを微塵も感じさせない程ピースフルな一日となった。
Can’t Bear This Partyも新曲を発表しながらも、正式なCDリリースは約三年ない状態なので、今年こそ是非リリースして再来日を望みたい。
写真:Miyu Kanki (Crystal Lake, For A Reason, All Found Bright Lights, キバオブアキバ, Can’t Bear This Party)、
Terumi Fukano(Namba69)
テキスト:鎌田 裕司 a.k.a. わいけ