【FEATURE】Fall Out Boy Japan Tour 2014ライヴレポート @2/5 ZEPP TOKYO
2013年、華麗なる復活を遂げたシーン最強バンドが昨年のSummer Sonicに続く待望の単独公演で再来日を果たした。当初発表された全公演は即日ソールドアウト。それを受け追加で発表された新木場スタジオコースト公演もソールドアウトという凄まじき人気の高さをみせつけた。今回はそのJapan Tour初日となるZEPP TOKYO公演の模様をレポート!
ほぼ定刻通りにスタートしたLiveは最新作の冒頭も飾る “The Phoenix” からスタートし、待ちに待ったといわんばかりに会場内は大きな大きな歓声に包まれる。メンバー全員黒い目出しニット帽を被って登場する演出に、彼等の初来日時の思い出が甦る。2003年インディーズ時代に当時レーベルメイトであったPunchlineと共に初来日時、そのツアーの中でPunchlineのワンマン公演があったのだが、発表されていなかったオープニングアクトとしていきなりお面を付けたFall Out Boyが登場し演奏を始めたのだ(笑)。
いきなりクラウドサーフも巻き起こりフロアは過熱する中、目出しニット帽を脱ぎ捨て繰り出されたのは “I Slept With Someone In Fall Out Boy And All I Got Was This Stupid Song Written About Me”。Peteとのお約束ともいえるシンガロングパートも完璧に決まりながら、続く “A Little Less “Sixteen Candles”, A Little More “Touch Me”” では圧巻な大合唱。この日はほぼ全てのオーディエンスがずっと唄ってたんじゃないかなっていう程で、バンドの愛され具合を改めて感じる。そしてイントロのエフェクトが鳴っただけで大きな歓声が上がる “This Ain’t a Scene, It’s an Arms Race” では、ブラックミュージックからの影響をバンドサウンドに落とし込んだパートから、一気にパンキッシュに疾走するサビ。「トーキョー!ゲンキデスカ?イッショニウタッテクダサイ!」とPatrickからのMCにオーディエンスの唄声はどんどん大きくなり、新作からの最新シングル “Alone Together” でも完璧なコールアンドレスポンス。
ここで一度場内が暗転した後、一人ステージでスポットライトを浴びるのはJoeだ。ハードロックやメタルを通ってきている彼ならではの華麗なる早弾きを挟み、再びメンバー全員が登場。パワフルなサウンドの上をPatrickの、時にソウルフル、時に繊細な唄声が踊る “Thriller” へ。ベース音強めのダンサブルなエレクトロに、アコースティックの音色が絡み合う “Death Valley” で再び会場を縦ノリの渦に巻き込んだ後、冒頭のドラムのリズムだけで悲鳴にも近い歓声が上がった “Sugar, We’re Going Down” や、マイケルジャクソンのカバー “Beat It” が披露され早くもハイライト級の盛り上がり。PatrickがAcousticギターに持ち替え演奏された “Young Volcanoes” ではカントリー調の楽曲に手拍子と唄声がこだまし、音源以上に荘厳で美しい雰囲気が立ちこめる。そして再び会場は暗転。闇に包まれた会場の中にIggy Popがパンクロックを語る声が響いた。
粋な演出の後、フロントの三人が登場。Patrickだけでなく、Acousticスタイルで “I’m Like A Lawyer With The Way I’m Always Trying To Get You Off (Me & You)” や “Grand Theft Autumn/Where Is Your Boy” を披露。Barで演奏されている様な、フルバンド時とはまた違った表情を見せるブルージーな演奏に酔いしれる。特に “Grand Theft Autumn/Where Is Your Boy” はフルバンドで聴きたかった方も多かっただろうが、これはこれでこの寒い日にピッタリのレアバージョンだった。
そして三人がステージを降り、ドラマーのAndyが一人で登場。数々の印象的なドラムパターンを生み出した彼から繰り出されるドラムソロから、あのリズムへと繋がっていく。そう、Andy以外のメンバーも登場しバンド史上一、二を争う名曲「Dance, Dance」だ。パンパンのフロアの中にはこの日最大のモッシュが巻き起こった後、続く最新作からの “Just One Yesterday” ではオーディエンスがスマホのライトを振り、それがまるで夜空に瞬く幻想的な演出になる。ラストに向かって駆け抜けるぞと言わんばかりに、Peteのスクリームでスタートした “I Don’t Care” で会場を再び縦ノリにし、音源以上にLiveという場で命を吹き込まれる “My Songs Know What You Did in the Dark (Light Em Up)” で本編は終了。「オーオー!」というコーラスは演奏中だけでなく、アンコールを求める中でも巻き起こっていたのはこの日の熱狂を象徴していた。
そんな熱望されたアンコールに登場し、演奏されたのは最新作のタイトル曲でもある “Save Rock and Roll”。再始動にあたり、バンドが掲げたステートメントソングだ。音源ではElton Johnが参加した同曲をどう再現するか楽しみな楽曲だったが、Patrickがピアノを弾きながら唄うというSomething Corporate的なソウルフルなパフォーマンス。ラストのPatrickとPeteの掛け合いも感動的であった。キラーチューンのオンパレード “Thnks fr th Mmrs” ではダークでスリリングなメロディーから一気にダンサブルなサビへと展開していく様を、より生々しいバンドサウンドで披露。新作Tourでありながら「From Under The Cork Tree」や「Infinity on High」、「Folie A Deux」といった過去の作品からの楽曲も組み込まれた満遍ないセットリストだったが、どの曲も再始動後のバンドの勢いと信念が加わる事によってパワフルな印象だ。充電期間を経た後も、本国を中心に貪欲にLive活動を行ってきたからこそのビルドアップしたアンサンブルに鳥肌立ちまくっていたらあっという間にラスト。そのラストに選ばれたのは色褪せぬ名盤「Take This To Your Grave」(通称青盤)から “Saturday”!その炸裂したフロアの様子はレポするまでもない程のカオスっぷり。Peteがベースを置き、真ん中でスクリームしまくる姿は初期からのファンだけでなくこの日この場所にいた皆の心に突き刺さった事だろう。
この日のLiveの客層は、若い世代だけでなく初期からのファンと思われる30代、そして意外だったのは30代中盤から後半と思われる女性も多く見られた事だ。ビルボード1位を獲得等、それだけバンドがパンクシーンを飛び越え1ロックバンドとして認知された証拠だろう。一度活動休止はあったものの、確実にパワーアップしている今、パンクやロックというジャンルを飛び越えさらに多くのリスナーを魅了して欲しいと心から願う。これからもずっと。
写真:KAZUMICHI KOKEI
テキスト:鎌田 裕司 a.k.a. わいけ