【REVIEWS】La Dispute – Room Of The House 〜 残酷なまでに突きつけられた、「生きる」 という事 〜
Released: 3/18/2014 – Better Living
2004年、米ミシガンで結成された彼等の音源を最初に聴いたのは、2008年にリリースされた1stフルアルバム「Somewhere at the Bottom of the River Between Vega and Altair」だったが、当時良く聴いていたイタリアの激情バンドLa Quieteと名前が似てるという理由で、勝手にそっち系のバンドなのかと思いながら聴いた記憶がある(笑)。少なからず激情やエモ・バイオレンスの要素はあったものの、彼等はポストハードコア、さらにはジャズやポストロック、ジャム、トライバルといった多くの引き出しを持ち、EPを中心に作品を出す毎にその才能を開花させていった。
2枚目のフルアルバムとなった前作「Wildlife」では、At The Drive-InやそのチルドレンであるUKのMillion Dead辺りの音を再び米アングラシーンの視点で再解釈したクレバーかつ野性味溢れるサウンドを鳴らしていたが、この最新作は明らかにそういったフォロワー的なレベルで語る事はできない。
ポップパンクのみならず、Into It. Over It.、Balance and Composure、Sainthood Reps、Koji等のインディー/オルタナティヴのサウンドを鳴らすバンドを輩出してきたレーベル、No Sleepに初期から所属していた彼等だが、今作からは自身のレーベルBetter Livingからのリリースとなる。同じく過去にNo Sleepに所属し、2010年には彼等とSplitをリリースしたTouché Amoréの大躍進や、Pianos Become the Teethの大傑作リリースでフォーカスされる事が多くなってきたこの界隈だが、そのざわめきを決定的にするのは間違いなくこのバンドなのだと確信する一枚に仕上がっている。
絶望の果てに辿り着いた虚無を感情のままに吐き出す “Hudsonville, MI 1956” や、Thursdayすらもひれ伏すエレジーを内包する “First Reactions After Falling Through the Ice”。過去最高のオルタナティヴさが顔を覗かせる “For Mayor in Splitsville” や、Pinbackをはじめとしたサンディエゴ界隈のインテリジェンスすらものにした “Woman (In Mirror)”。初期からの武器であったスポークンワードも随所に挟ませつつ、それを大々的にフィーチャーした “Woman (Reading)”や“Objects in Space” 含めて、その言の葉が全て異なる情景を僕等に届けてくるのだ。そして作品を通して過去最高にダウナーなマイナーコードに支配されているからこそ、“Stay Happy There” での暴発するエモーションや “Extraordinary Dinner Party” でのどうしようもない温もりが余計に響くのだろう。
決して万人に届く作品ではないかもしれないが、間違いなく現存の「エモ」を最も体現しているバンドであり、2014年のシーンを代表する一枚だろう。収録された41:49という時を自分の今と重ねながら、そして向き合いながら何度も何度も聴いている。
テキスト:Yuji Kamada