【REVIEWS】Abandon All Ships – Malocchio 〜 エレクトロコアの進化はまだ止まらない 〜
Released: 4/2/2014 – GO WITH ME / Rise
正当進化ではあるがこれまでとは比較にならないサウンドを手に入れた。2006年にカナダはトロントで結成され、2009年に自主制作された「Abandon All Ships EP」リリース時は、当時Attack Attack!のデビュー作で大きなトレンドになっていたエレクトロコアシーンの新星として早くから話題となった。そして過去にはProtest The Hero、Lights、Meansといった素晴らしいアーティストを輩出してきUnderground Operationsと契約。同じくしてアメリカではRise/Velocity Recordsと契約し、世界デビュー作「Geeving」をリリース。そこからの彼等の活躍は知る方も多いだろう。
2013年9月からレコーディングに入ってこのタイミングでリリースされている事からもお分かりの通り、スムーズに制作は進んだと思われる本作だが、それにしても2ndアルバム「Infamous」からの進化が凄まじい。The Ghost Insideばりに鬼タイトにデジタライズされた疾走感にさらなるハイブリッド感を加える最先端エレクトロと、情感溢れるクリーンパートが渾然一体で繰り出される “Reefer Madness”。Dead By April辺りの北欧エッセンスと刹那のメロディーラインが印象的な “Trapped” や、バンドが敬愛するNorma Jeanのカオティック要素とEDMサウンドがリンクする最新シングル “Cowboys”。そしてハウスミュージックの多幸感と扇動的アッパー加減を見事にバンドサウンドと融合した “Paradise” での、アゲてアゲてから繰り出される不協和音満載ブレイクダウンも強烈だ。Issuesも “Hooligans” で使用した、Reggaeでよく使われる通称ピュンピュンマシーンを大胆に導入したタイトル曲 “Malocchio” をはじめ、シンセ担当のSebastian Cassisi-Nunezのセンスも過去最高に爆発。新ドラマーMelvin Murray、そして前作では一度脱退したものの復帰したリードギタリストKyler Browneの繰り出す超ヘヴィなギターリフと共に、バンドのサウンドの中核をなしているのも明らか。改めて進化し続けるバンドの実力をまざまざと思い知らされる一枚が完成した。
テキスト:Yuji Kamada