【REVIEWS】Fireworks – Oh, Common Life 〜 人の痛みを知る人のみが鳴らせるメロディック 〜
Release: 4/2/2014 – ICE GRILL$ / Triple Crown
初期のオーセンティックなポップパンクから作品を重ねる毎にインディー感をMixし、前作「Gospel」で孤高のサウンドと圧倒的説得力を手に入れたミシガン産。TransitやTurnover等と共に、Easycoreや新世代ポップパンクとはまた一味も二味も違ったサウンドで確固たる存在感を放つバンドだ。彼等に影響を受けたであろうModern BaseballやSomosといったバンドが自身の解釈を持ち込み、オルタナティヴやグランジを消化したバンド、インディーロックのバンド達とどんどんとクロスオーバーしており、新世代組も非常に面白くなってきている。
そんな中、前作から約3年、刻々と移り変わるシーンの中ではかなりマイペースなスパンだが、三枚目となるフルアルバムが発表された。前作から3年近くも経った事をあまり感じさせないのは、それだけ前作の奥行きがあったという証拠でもあろう。それ故にこの新作を聴く前は少し不安も混じる期待すらあったのも事実。いつもそう、この気持ちがあるからこそ音楽を聴くのはやめられないのだとも思う。
メジャー在籍時のSaves The Dayを思わせるフレンチマイナーコードを多用したパワーポップソング “Glowing Crosses” や“Woods”。メランコリックな “One More Creature Dizzy With Love”。そして “The Only Thing That Haunts This House Is Me” でのGSサウンド。ブルージーでソウルフルな “Run, Brother, Run”。新キーボーディストの加入によって生み出された、これまで以上に幅のあるアレンジも聴き所だが、何より前作のファンの心は決して離さない温もりが詰まっている。“Flies On Tape” や “Play God Only Knows” 辺りではしっかりと疾走感もあり、こうしたルーツも残した事からもお分かりの通り、劇的な変化はない。しかしその分、よりバンドとして円熟した事がストレートに伝わる一枚に仕上がった。
痛みなんて本人以外にはわかりっこないという周知の事実を理解した上で、音楽で全人類の気持ちを救う事なんて出来ないと分かった上で、それでもこうして君の側で音楽を鳴らしているんだよ。そう言わんばかりに、押し付けがましさゼロの不変のメロディーを鳴らすのがFireworksというバンドなんだよなぁ、と再認識させられる。
やはり、こうして凄まじく大きく高い期待を超えた時ほど新作を聴いて快感な事はない。消えない傷を拭う温かさ。かっこつけるのは嫌だけど、この新作を聴いて空を見上げてしまう一種のナルシシズムにも似た何かを大切にしたいと思うのは、僕だけではないはずだ。
テキスト:Yuji Kamada
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