【REVIEWS】Chiodos – Devil 〜 リスナー各々が感じる悪魔とは 〜
Released: 5/14/2014 – TRIPLE VISION / Razor & Tie
創世記からどんどんと姿形を変えてきたスクリーモと称されるシーンの中、決して順風満帆とは言えないながらも常に多くのリスナーから熱い視線を集め、第一線で活動し続けてきた彼等がここに完全復活だ。一度バンドを離れたフロントマンCraig OwensとドラマーDerrick Frostが帰還。代わりに脱退したリードギタリストJason Haleの穴をThomas Erakが埋めた。このThomasは、Chiodosがかつて所属したEqual VisionのレーベルメイトであったThe Fall Of Troyというバンドのフロントマン兼ギタリストである。こうして新旧完璧な布陣で再び動き出したバンドが発表した最新作。
作品は、やはりカリスマティックな存在感は音源からも溢れんばかりに放出されるCraigの唄声。そして退廃的でスリリングな楽曲展開というこれまでのバンドらしい要素に、さらなるプログレッションとインテリジェンスを加えたThomasの新たなるケミストリーが全編を支配している。シアトリカルで妖艶な“ Why the Munsters Matter” や、零れ落ちるピアノのデカダンな旋律を持つ “Ole Fishlips Is Dead Now” に代表される世界観は、間違いなく彼等にしか産み出す事が出来ない圧倒的オリジナリティーだ。その他にも実験的なスタイルでレコーディングされたという “Duct Tape”。Craigが過去にやっていたCinematic Sunriseばりにキャッチーなポップサウンドを、Chiodosというフィルターで溶かし込んだ様な “3 AM”。悪夢の様な展開で雪崩れていく “Sunny Days & Hand Grenades” 等、これまでも多彩な音色を入れていたバンドはさらに表情豊か。フロントマンとして高い意識を持つCraigの手掛ける歌詞も、まさに彼の心の欠片であると同時にバンド全体の想いを代弁している。
Craigはタイトルに関してこう話す。「Devilとはあの皆がイメージする直接的な化身ではなくて、日常生活での誘惑の事。後悔に変わる出来事や、人生を通して自分をどう見る事になるかの選択を迫られる瞬間を指している。このアルバムそのものが、俺にとっての悪魔の定義なんだ」と。こうしたCraigの言葉通り、リスナー各々が今作を通して感じる悪魔は異なるだろう。本作は自身の悪魔と対峙するサウンドトラックともいえる。
テキスト:Yuji Kamada