【REVIEWS】Sylar – To Whom It May Concern 〜 メタルコアシーン最強のハイブリッド感 〜
Released: 5/13/2014 – Razor & Tie
IssuesやDanger Kidsといったリバイバルするnu-metalすらも独自の解釈で超越したバンド達に、間違いなく続くのがこの米NY産だ。2013年にリリースされたデビューEP「Deadbeat」からその片鱗は充分すぎるほど放出していたが、まだ序章だったのだ。その後Razor & Tieと契約、完成した世界デビュー作となる今作は想像以上の一枚に仕上がった。
PeripheryやStructureといった、Djentというだけでは表現しきれない程のセンスを持ったバンドと同等のプロダクションを持ち、メタルコアやnu-metalをベースに圧倒的センスフルなエレクトロとHip Hopのエッセンスをぶち込んだ楽曲は本当に圧巻でしかない。PVも制作された “Prescription Meditation” や “Two-Timer” でのアグレッシヴさとディスコーダンスなサンプリング、そしてスケール感の溢れたクリーンパートの共存。先行シングルで発表された “Golden Retreat” も然り、疾走感やブレイクダウンだけに頼る事なくそこかしこに散らばるハイブリッド感は、確実にIssues以降が鳴らす事の出来る新世代の証。Limp BizkitやKorn、Slipknotばりにブリンブリンな図太い低音とRapスタイルのボーカルの乗せた “Spitting Image”。Linkin Parkを彷彿とさせるエモーションを持つ “Never Let It Go”。さらに、全体的に漂う近未来感とストリート感もまさに時代が求めていたそのものではないだろうか。
Issuesのブレイク以降、ここからさらに盛り上がる事必至と思われていたこの界隈で、いきなりこれだけの尋常ではないセンスのバンドが出てきてしまった事に少し面食らってしまったと同時に、この先の見えない何かが大きく動き出した様な気がして身の毛がよだった。このバンドの今後も含め、シーンはまだまだ進化して行く。そう思わされる凄まじいダークホースの登場だ。
テキスト:Yuji Kamada