【FEATURES】Chiodos, Newアルバム「Devil」インタビュー
緻密に計算されたドラマティックな曲構成とシアトリカルな世界観、そして美しくも生々しい激情サウンドでエモ/スクリーモ界に革命を起こしたChiodosが、いよいよニューアルバム『Devil』を完成させた。2009年にはメインヴォーカル・Craig OwensやドラマーであるDerrick Frostが相次いで脱退しファンに衝撃を与えたが、2012年にメンバーは和解、2人は待望の復帰を果たした。同年新たなギタリスト・Thomas Erakも迎え入れ、新たに生まれ変わった彼らはどのように『Devil』を作り上げていったのか?その真相に迫った。
“もっと感情に訴えかけるような、生きているものにしたかった”
──ニューアルバム『Devil』はChiodosとしては4年ぶり、CraigとDerrickの復帰作としては8年ぶりの作品となります。改めて完成してみての感想を伺えますか?
Craig:まさに今のChiodosを表す、素晴らしいアルバムが出来上がったよ。聴いてくれる人たちにとって、どんどん大きな存在になり続けていく作品だと思う。
──CraigとDerrickの復帰、そしてギタリストのThomasが加入してから2年が経ちます。この2年間はアルバムの制作やツアーなど多忙だったと思いますが、振り返ってみてどんな2年間でしたか?
Derrick:難しい質問だね……一つ言えるのは、この2年間は本当に早く過ぎ去った。去年は海外も含めいろいろな場所でライヴも出来たし、バンドとして初めて挑戦することも多くて、素晴らしい経験がたくさん出来たよ。でも僕自身が一番嬉しかったのは、このメンバーで再びスタジオに入り、曲作りが出来たことだね。これまでの感情を音に表していく作業は、とてもエキサイティングだった。実は昔は、曲作りよりもライヴをやることの方が僕にとって重要だったんだ。だから、自分でも変わったなあと思う。
Craig:そうだね……最初のうちは、「アーティストとして自分が何をしたいのか」をはっきりさせたいと思っていた。その答えの中に自分の目的があると思ったんだ。そしてバンドに戻るときは、ここでの自分の役割を受け入れよう、と思ったんだよ。実は過去にこのバンドにいたときは、自分が与えられた役割に対して、ものすごく苦しんだ。でも振り返ってみるとその役割は僕にとって、自分がなりたい人物像へと近づくのに、とても大切な経験だった。だからもう一度その役割を担いたい、と思うようになったんだ。
──少しパーソナルな質問になってしまうのですが、現在のChiodosでは以前のような苦しさは感じなくなった、ということでしょうか?
Craig:それはもちろん、今でも朝起きて、プレッシャーやストレスに押しつぶされそうになることだってあるよ。でも人生において幸せになると言うことは、そういった状況を乗り越えることなんだ、と改めて気がついたんだ。
Derrick:クレイグも前に言っていたんだけどね、バンドって言うのは、男女の付き合いや結婚のようなものなんだ。たとえば結婚したら、毎日相手と顔を合わせるだろ?たまに感覚が合わないときもあったりするけど、努力してお互いに近づかなくちゃいけないときもある。僕たちだって人間だから、いつも完璧ではいられないけど、良い部分も悪い部分も受け入れることが重要だと思うし、僕たちは今同じ目線で同じ目標に向かっていられていると思うよ。
──それを聞いて安心しました!では、アルバム『Devil』についても聞かせてください。久しぶりのリリースとなりますが、制作時において特に意識していたことなどはありますか?
Craig:実はね、Chiodosとして初めて、“何も意識しないように”したんだ。そして良い曲を作ることだけに集中した。この曲はへヴィだとかこれはChiodosにしてはソフトすぎるとか、そんなこともあえて気にしないようにした。唯一意識していたことを挙げるとすれば、偏ったこだわりや保守的な感情から離れて曲を作ること。そしてどんなものが僕たちのアルバムに必要なのか、どんなものが僕たちのアルバムを象って行くのか、ということは常に考えていたよ。
Derrick:今回はこれまでと違って、あまり時間を置かずに曲を作っていった。今までは多くても6曲くらいのためにスタジオに籠っていたけど、今回はスタジオに入る時には20曲くらいは作っていたかな。普通、バンドはレーベルのために曲のプロモーションやツアーに時間を割かなければならないけど、今回は無理やりそう言った時間を作ることもなく、自分たちの時間をしっかりと保つことができたんだ。
──以前と比べて、短期集中型で制作していったんでしょうか?
Craig:短期集中というより、一つ一つの曲に対しての間は置かずに、とにかく集中して長いスパンで作りこんで行った感じだね。だからむしろ、永遠に曲を作っていたように感じたよ(笑)!でもね、多くのバンドがこのくらい時間をかけて音を作りこむべきだと思うし、僕はこうやって音を作っていくことが大好きなんだ。これは僕の意見だけど、音楽を作るには苦しさが伴う。なぜかって言うと、それが進化を生んでいるからなんだ。
──『Devil』は、Chiodosが繰り返してきた進化の結果なんですね。
Craig:うん、まさにその通りだ。さっきは永遠のように思えた、と言ったけど、今回よりもさらに時間をかけてアイディアに集中して、最終的な作品に仕上げて行っても良いな、と思ってる。それに、ここ最近はバンドにとってツアーが一番大事で、音楽は二の次になっている傾向があるよね。その時間も音作りに当てられるように、環境が変わっていくといいな、とも思ってるんだ。今の技術を使えば5分で曲を作ることも出来るけど、そんなことはしたくないし、時代を問わずに愛される作品を世に出していきたいからね。
──『Devil』は間違いなく時代を問わずに語り継がれる作品になると思います。今回初めてDavid Bottrillをプロデューサーに選んだ理由も、そう言った希望があったからなんでしょうか?
Craig:そうだね。彼はMuseやTool, Stone SourやSilverchairの作品を手がけているんだけど、彼らの作品って、感情的で生々しくて感動できるような、ロックのあるべき形をそのまま映し出していると感じた。Davidの携わってきた作品はオーバープロダクションにせず、時代を問わず愛されるものだったから、Chiodosのやりたいことをきちんと理解してくれると思ったんだ。
Derrick:それに、同じようなアルバムばかりを手がけているプロデューサーとはやりたくなかった。12,3曲しか入らないアルバムに、似たような曲ばかりを入れたくなかったんだ。その点Davidが手がけてきた作品はすべて印象に残るものだったからね。
Bradley:彼は俺たちのヴィジョンをきちんと理解してくれたし、バンドの反応から俺たちがどんなものを求めているのかをすぐに見極めてくれた。すごくやりやすかったよ。
──具体的に、どのようなヴィジョンがあったんですか?
Craig:たくさんあったよ。でも一つ挙げるとすれば、最近はEDMやオートチューンが大流行しているけど、そう言ったテイストは取り入れたくなかった。もっと感情に訴えかけるような、生きているものにしたかったんだ。だから電子的なものはあまり使わず、例えばタップダンスの音や子供の声を入れたりもしたんだよ。
──そう言った発想は、どこから得るものなんでしょうか。
Craig:大袈裟に聞こえるかもしれないけど、人生、かな。すべてのインスピレーションは、今まで僕たちが送ってきた人生から得ているよ。
Derrick:僕たちは長いこと知り合いなのに、一つのことに対してまったく全く違ったものの見方をしていることってたくさんあるんだ。それってすごく面白いよね。例えば、風の音とかを聴いて、ドラムのパターンが頭に沸いてくるとする。でも同じものを聴いたCraigは、別のヴォーカルメロディーを思いついたりするんだ。そう言う、角度の違ったものの見方からインスピレーションを受けることも多いよ。
──なるほど。シングル曲についてもお伺いしたいのですが、アルバムからのファースト・シングル『Ole Fishlips Is Dead Now』は、先ほどあなたたちがおっしゃっていた生々しさや鮮烈さもありつつ、Chiodosらしい激情的なサウンドと美しい旋律が印象的でしたね。
Craig:ありがとう!この曲は、これまでの僕たちと今の僕たちをつなぐ架け橋とも言える存在なんだ。僕たちは過去の自分たちのことを忘れていないし、ファンのみんなにもそれを忘れてほしくない。それと同時に、これから僕たちと一緒に新たな道を切り開いてほしいと思った。だから、この曲をアルバムのファースト・シングルに選んだんだよ。
──ファースト・シングルを発表してから、「Behvis Bullock」や「3 AM」などアルバムのキーとなる曲のビデオが相次いでアップロードされていきましたよね。
Craig:これにもきちんと理由があるんだ。昨今の音楽業界では、間違いなくYoutubeが音楽を見つけられる最大のメディアになっているよね。そんな理由もあって、それぞれの曲にビジュアル・イメージをつけたかった。これから新たにミュージックビデオを撮り直すものもあるけど、それも含めてすべてのビジュアル・イメージの根本になっているものがあってね。それは人々が将来、このアルバムに収録されている曲のビデオを観たときに、ノスタルジアを感じ、深く感情に訴えかけるものにすることなんだ。そして同時に、観る度に違った角度から何かを感じ取ることの出来るものを作りたかった。さっき挙げてくれたビデオはKyle Thrashと言う僕たちの友達と一緒に作ったんだけど、何度もやり取りを重ねて、ああ言う形になっていったんだよ。
──アルバムのアートワークにも、そのようなテーマがあるのでしょうか?
Craig:これはね、僕がカナダのケベックから車で帰ってくるときに、同じような光景を目にしたんだよ。あたり一面は風が強く、泥交じりの雪が覆い尽くしている中で、風船がスカーフと一緒に電線に引っかかっていた。それらが空に揺れているのを見て、美しさのあまり心を奪われてしまった。風船ってすごく壊れやすいものの象徴だと思うんだけど、その性質って、僕たちが表したかったものにとても近いと思ったんだ。それでこのイメージをメンバーに伝えたんだよ。
Derrick:で、そのイメージを聞いた時に、僕たちも大賛成だったんだ。アルバムタイトルである『Devil』の意味ってよく聞かれるから、Craigが「人が誰しも持っているもので、自分自身を知るものだよ」って答えてくれるんだけど、このアートワークはその意味合いとは真逆なものを連想させるから、面白いアイディアだと思ったんだよね。
──ビジュアル・イメージも含めて、新たなChiodosを表す印象的な作品になったと思います。これが最後の質問となりますが、生まれ変わったChiodosとしてのこの先の展望などあれば教えてください。
Matt:それはもちろん、世界で一番のバンドになることかな(笑)?
Derrick:Mattの言ってることは正しいと思うよ(笑)!Chiodosとして持っている音楽への情熱を、多くの人とシェアできれば良いなって思ってる。
Craig:もちろん『Devil』を世界中の人に聴いてもらうことが一番だけど、自分自身のことで言えば、正直な気持ちで音楽に向き合っていくことかな。
Interview / Translation: Leyna Miyakawa
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