【REVIEWS】Quietdrive – The Ghost Of What You Used To Be 〜 確固たる唄とメロディーの放つ光 〜
Released: 7/9/2014 – TWILIGHT
「鉄板」という言い方は世に溢れていて本来の意味よりも薄っぺらく聞こえてしまう時代だからあまり使いたくない表現だけれども、紛れもなく今作も「鉄板」の最新作だ。不純物の一切ない、ただただ純粋に良いメロディーが今作も詰まっていながら、それだけではない異常な説得力を持っているのがこれまで多くの心あるリスナーに愛されてきた理由なのだろう。前作「Up or Down」から約二年、待望の5枚目となる新作がここに完成した。2013年の来日時にお披露目は済んでいるが、前作リリース後にバンドを離れたオリジナルギタリストJustin Bonhiverの代わりに迎えられたBrady Trudeau加入後初となる作品でもある。
2nd作「Deliverance」の一曲目 “Believe” を彷彿とさせる、新たな幕開けを告げる様なドラムの音色が印象的な “Tattoo”。高らかに鳴り響くギターの音色と、囁くように歌い始めるKevinの歌声でいきなり彼等の世界に誘われていく。個人的にこの囁くように、穏やかに、低温で歌うパートから一気にエモーションを爆発させて歌い上げるKevinのボーカルスタイルはバンド最大の武器だと思う。“Run Away”、“World War” 等、そのぶれない武器を遺憾なく発揮した楽曲がこれまで以上に多い印象。さらに、どれだけ円熟を重ねても “Step Away” に代表される様な疾走曲や、“Close Your Eyes”、“London” といった彼等の真骨頂であるバラードもしっかり収録。“Without My Hands” での80’sポップス感は間違いなくKevinの愛するルーツが垣間見れる一曲であり、twenty|one|pilotsやGrouploveを思わせるUSインディーロック要素も実験的に取り入れた “Forget the Lies” のような新たなアプローチの楽曲もあり、バンドの進化は確実に刻みこまれている。2012年に日本限定でリリースされたシングル “Every Day” や、2013年にUSのiTunesで販売された癌と闘っている子供達の為のチャリティーシングル “Even When I’m Gone” も収録。ここ数年聴いていなかったというリスナーの心も、確実に掴んで離さないだろう。
言葉には表せないその説得力はフロントマンKevinの歌声であり、その声を最大限に生かしたバックの演奏なのだ。昨今の、全てのパートが主役的プロダクションやド派手なサウンドメイクもそれはそれで良いとは思うが、最後に僕等の心に残り続けるのはやはりこうした真っ直ぐで美しいメロディーであって欲しいと、心から願う。
テキスト:Yuji Kamada