【FEATURES】Finch『Special Live 2014』 ライヴレポート@ 8/5 渋谷CLUB QUATTRO
デビュー作にして名盤中の名盤「What It Is To Burn」のリリース10周年記念として、その1st再現ツアーで2014年2月に待望の来日を果たしたFinch。大盛況で幕を閉じ、その熱も未だに冷めやらぬ中、まさかの再来日が決定。超タイトなスケジュールの中、遂にニューアルバムが完成という歓喜のニュースと共に急遽決まった、僅か一日のみというプレミアム来日をレポートさせて頂く。
この日はオープニング/サポートアクト無し。定刻19時から若干遅れ、場内は暗転。ノイズミュージックにも近い低音が会場に鳴り響き、そこにギターが被さって行く中、メンバーが登場した。先日の来日時は前述の通り1st再現Liveというコンセプトだった為、一曲目は言わずもがなで “New Beginning”。その分、今回は何の曲で幕を開けるのか全く予想がつかなかったが、繰り出されたのは同じく “New Beginning”!前回から約半年というスパンだっただけに前回見る事の出来なかったオーディエンスは歓喜、前回も参戦したオーディエンスもあの時の興奮を再び噛み締める様に全体は大爆発だ。Nateのスクリームとバスドラの低音が強烈に腹と耳を殴りつける相変わらず凄まじき音像。間髪入れず、オーディエンスを再び嘲笑うかの様に繰り出されたのは “Letters To You”。前回もそうだったが、二曲目には勿体ないほど贅沢なチョイス。そしてここまでくると何となく予想はしていたが、これぞFinchと言うべきRandyの印象的なリフが鳴り響いた瞬間それは確信へと変わる。そう “Post Script” へ流れて行く。お分かりの通り、なんと冒頭三曲は前回来日時と全く同じく1st「What It Is To Burn」からと全く同じ流れにオーディエンスも良い意味で裏切られた事だろう。
今度はこれでしばらくは1stの楽曲なのかと思わせたら、いよいよ2nd作から “Ink”!プログレッシヴで辺拍子満載のイントロから、一気にディスコーダントに疾走。途中超絶エモーショナルなアルペジオパートも完璧に再現し、演奏力の高さもみせつけていく。会場全体にこだまするシンガロングに対し、それを切り裂く様なスクリームを放った “Grey Matter” の後「アリガトーゴザイマス!」 とRandyのMCを挟み、再び爽快さとオルタナティヴさ、そしてエモーションの王道とも言える切ないメロディーを持つ “Perfection Through Silence” へ。既に大きな盛り上がりを見せていたが、ここで9月末にリリースが発表になった新作からいよいよ新曲 “Anywhere But Here” が披露。硬質な感触を持ったギターリフがイントロからインパクト抜群。Nateの旋律が走る様なスクリームもがっつり入った鳥肌モノの一曲だ。こうしてアグレッシヴな曲が続いて来た中、続くはミッドテンポな “Without You Here” へ。ただのバラードではなく、90年代エモ創世記のニュアンスを最も要所要所に散りばめた名曲は、何度聴いても別格に心地よい。続いては「Say Hello To Sunshineの曲聞きたいかい?」 と“ A Piece of Mind”。途中拡声器にマイクを当てて叫び散らかすパフォーマンスも至極。イントロからさらに場内のボルテージを上げ、凄まじいモッシュピットとシンガロングを生み出した “Stay With Me” に続き、またしてもここで新曲 “Two Guns To The Temple”。そしてドラムロールが鳴っただけで大きな歓声が上がったバンド史上、一、二を争う妖艶な “Insomniac Meat” を立て続けに披露した後、「モッシュをしようぜ!」 と、Randyの煽りを受け “Untitled” がスタート。それに呼応したオーディエンス達がドでかいピットで身体を当て合っていた。RandyがNateの額の汗を拭う優しさ120%(笑) な光景を見せてくれた後、本編ラスト “Ender” が雄大かつ力強く鳴らされた。同曲終盤のアウトロはいつも通り、ステージの上をノイズまみれにしてメンバーは一旦ステージを後に。アンコールで再びステージ現れるまで、その音を鳴らしっぱなしにする演出は毎回ため息が漏れる。
アンコールは前回来日時も披露された “Worms of the Earth” からスタート。映画「Underworld」のサントラにて収録された1stと2ndを繋ぐ代表曲だ。続いては個人的に2ndで最も好きな “Bitemarks And Bloodstains”。多分演ってくれる事はないだろうな…と思っていただけに、あのオリエンタルかつ浮遊感のある空気感を生で体感出来たのはハイライトであった。Randyが「モッシュピット!」 と一言だけ放ちスタートした “Three Simple Words” で、その楽曲の疾走感と共に再び会場のギアがオーラスに向かって加速していき、この日最後はやっぱりこの曲以外には考えられない“What It Is To Burn”。お決まりの「しぇいばぁぁぁぁあぁああぁん!」 は勿論、会場全体が大きな塊となって終了した。
Live終演後、直前にアナウンスされたこの日この場所に来たファンの為に行なわれた新作の先行リスニングパーティーへ。ダイジェストになるか数曲フル試聴になるか当日まで分からないと言われていたが、結局全ての楽曲をフルで試聴出来る超プレミアムな催しとなった。これから徐々に明らかになるだろう新作の全容を、この日来る事の出来なかった中で楽しみにしている方も大勢いると思うので細かく感想を述べるのは控える。ただし、その先行リスニングパーティーの後に開催されたQ&Aコーナーで「何か既存のモノの焼き回しを作るつもりはなかった。Finchという5人が集まり、5人だからこそ鳴らせる音を目指した。」 というメンバーの言葉が象徴する通り、これまでのどの作品とも異なる表情を持ちながら、紛れもなくFinchにしか産み出す事の出来ない最新型サウンドが詰まっているという事だけはお伝えしたいと思う。
そんな最新作をリリース後、来年には再びここ日本に必ず帰ってくると話していたメンバーの言葉を信じつつ、まずは約9年振りとなるフルアルバム「Back To Oblivion」を心から期待したい。
テキスト:Yuji Kamada
写真:WYPAX Photography