【REVIEWS】The Summer Set – Legendary
Released:4/16/2013 – Fearless / Kick Rock Invasion
最後にThe Summer Setのライブを見たのは、おそらく去年のWarped Tourでのライブが最後だったはずだ。あの時感じたのは、彼らの得意とするポップさとその優等生ぶりが、会場の雰囲気とはマッチしていなかったということである。これは2011年リリースのEverything’s Fineが良い作品ではなかったということではない。実際、APマガジン277号でライターが4つ星を与えているように、素晴らしい出来映えの作品だった。まさに珠玉の名曲揃いとも言えるアルバムであり、間違いなくバンドを新たなネクストレベルへと引き上げるものだった。しかし、結果としてバンドはメインストリームでの成功を収めることが出来なかったのだ。それからバンドはFearless Recordsへと移籍。彼らは諦めることなく、自らのスタイルを貫き通す事を決めたのだ。
今作「Legendary」は、まさに原点回帰と言えるアルバムだろう。2009年リリースの「Love Like This」のように、弾けるビートに心地よいメロディ、勢いのある楽曲達が揃っているのだ。実際、前作「Everything’s Fine」には勢いに欠ける楽曲がいくつかあった。しかし、今作では聞く者をがっかりさせるような楽曲はどこにもない。デビュー作の雰囲気を踏襲しつつ、青春ドラマの「ドーソンズクリーク(原題:Dawson’s Creek)」や「ママと恋に落ちるまで(原題:How I Met Your Mother)」などを彷彿とさせる甘酸っぱさに、前作「Everything’s Fine」の自由で駆け抜けるような疾走感を持った作品になっているからだ。中でも “Jukebox (Life Goes On)”、”The Way We Were”、”Lightning In A Bottle” といった楽曲を聴けば、そこにエモーショナルを感じる事が出来るだろう。それはまさにバンドが作り出した名曲であり、デートのBGMにはぴったりと言える。楽曲のどこかに哀愁と可愛らしさを感じることが出来るのも、フロントマンBrian Dalesの才能ではないだろうか。
全体的に今作はまとまり過ぎている様子はある。どの楽曲も打ち込みビートの音色が響き、生音に近いドラムサウンドが皆無と言っていい。アルバムの最後まで、そのような雰囲気が漂うのだ。少しずつそういったエレクトロサウンドを取り除き、アコースティックなサウンドをより顕著に押し出せば、収録楽曲の個性が光り、そしてパーソナルな雰囲気の漂う作品となるだろう。本作品の最後に収録されているアルバムタイトル曲を聴けば、前述の意味がわかるのではないだろうか。
The Summer Setのバンドとしてのゴールは、音楽チャートを席巻するようなメインストリームでの成功なのだろうか。それは間違いなくそうだろう。メジャーでは、アーティストがどうしたいかよりも、ビジネス的にどう振る舞うかといった考えが優先される。それと同時に一年中をヴァンで旅しながら、各地方のライブハウスや色々な場所でライブを行わなければならない。見た目は青春のロードムービーのようだが、実際は大変過酷なものである。こういった努力は報われるべきである。あのJay-ZやBeyonceが歌詞に登場する “Boomerang” はヒットを狙える楽曲だが、逆に “Fuck U Over” は少しチープだろう。”Maybe Tonight” は、彼らの本質を垣間見る事が出来る楽曲であると言える。バンドの今までのキャリアを振り返ってみれば、彼らは地道に自らのサウンドを確立して来た。そのキャッチーなメロディは、そこらのポップなものとはまるで違う。しかし、より一皮むけるためには一層の努力が必要となるだろう。
テキスト: Evan Lucy
翻訳: Ken-Ichiro Arima/有馬健一郎
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