【REVIEWS】Jimmy Eat World – Damage
Released: 6/11/2013 – RCA / Sony Music Japan
Jimmy Eat Worldの8作目となる今作「Damage」を聴けば、ある事を感じとることが出来るだろう。それはフロントマンJim Adkinsが、ここ数年の間に心に深いダメージを負うような辛い経験をしたかもしれないということだ。もしかすると、そういうコンセプトで作り上げた作品かもしれないが。そう感じるのも、2010年リリースの「Invented」が、ランダムにピックアップした写真からインスピレーションを受けて誕生した楽曲だったのに対して、今作はものすごくパーソナルな世界観が広がっているからである。関係修復を切望するタイトルトラックの “Damage”、人の弱さを受け止める “Lean”、恋愛での過ちについて歌った “Book of Love”、嫉妬についての “I Will Steal You Back”、追憶について語る “You Were Good” など。つまり、このアルバム「Damage」は10通りの悲しみを表現したものと言えるだろう。
そして、どの楽曲も素晴らしい。彼らの代表作「Futures」や「Bleed American」と肩を並べるほどの名作と言っても過言ではない。Alain Johannes (Queens Of The Stone AgeやNo Doubtのプロデュースで知られる)が指揮をとった今作は、楽器が鳴らすサウンドの温もりが感じられ、デジタルではなく、より生に近いオーガニックな音が聴ける。(つまり、今作品が文句無しに素晴らしい作品だと言う事である。)
変に作り込み過ぎてなく、オーヴァーなギターソロもなく、楽器の音を無理にいじってもない。ものすごくタイトでコンパクトにまとめられているのだ。まさにあの「Bleed American」から少しだけアグレッシヴさを取り除いたような、完璧な組み合わせのロックアルバムなのだ。”Please Say No” はコーラスが大変美しいし、”Book of Love” はアコースティックギターの音色が心地よい。Maritimeのアルバム「We, The Vehicles」に近い世界観だ。そして、90年代末期のJimmy Eat Worldのヴァイヴを感じさせつつ、4/4拍子から4/3拍子へとスライドする”Appreciation”、ニューウェーヴ調のシンセサイザーの音がアクセントとなっているギターロックナンバーのNo Neverも秀逸の出来だろう。どの楽曲も他の収録楽曲の邪魔をしないし、バンドメンバーも敢えてオーヴァーなプレイはしていない。いかに楽曲を際立たせて、しっかりと聴かせる方法が何かを彼らは熟知しているのだ。これこそ、まさにソングライティングのお手本でもあり、バンドのお手本と言える。これが、Jimmy Eat Worldが常に第一線で活躍出来る理由なのだ。
テキスト: Scott Heisel
翻訳: Ken-Ichiro Arima/有馬健一郎