【REVIEWS】PUP – PUP 〜 ハイプに立てる中指 〜
Released: 4/23/2014 – bullion / SideOneDummy
また面白いバンドが登場した。まるでシーンそのものを嘲笑うかの様なニヒルさもありつつも、それが全然分からないほどに熱い。とにかくこの感情を叩き付ける様なサウンドを体感するのは久しぶりだ。
カナダにて2013年結成と、僅か活動一年にしてパンク好きなら知らぬ人間はいないであろう老舗レーベル、SideOneDummy Recordsと契約。元々同レーベルと契約する前に、本国カナダのRoyal Mountain Recordsというレーベルからリリースされたこのデビュー作を、改めてワールドワイドでリリースする運びとなった。
衝撃的なPVにも負けず劣らずのリード曲 “Reservoir” を筆頭に初期パンクやガレージ、90年代のポストハードコア界隈で顕著だった焦燥感溢れるサウンドが要所要所で顔を覗かせる。その様は、あそこまで激情感はないがAt The Drive-Inに近い。ただしAt The Drive-Inが直情的なサウンドを鳴らすまでの間に様々なインテリジェンスを通過していたのに対して、彼等のアウトプットの仕方はもっともっとシンプルでファニーだ。Johnny ForeignerやGrouploveの持つ洗練されたごった煮感を持つインディーサウンドの “Mabu” や、“Yukon” での枯れたパブロック観すら表現してしまう25歳そこそこの若者達。そして何よりも “Dark Days”、“Back Against The Wall” に代表されるシンガロング必至のバース達に心揺さぶられる事は間違いない。バンドが敬愛するニューヨークのハードコアバンドThe Bronxの作品を手掛けたDavid Shiffman(他にはWeezerやVampire Weekend等) をプロデュースにむかえているのも妙に納得の人選。
こうした音源は勿論、「俺たちのLiveはとにかくラウドだ!」 とメンバーが語る様に彼等の本領が発揮されるのは、Billy TalentやFucked Upといった同郷カナダの先輩達からも絶賛されているそのLiveなのだろう。パンクやハードコアという垣根を飛び越え、ロック界全体の中核へとコマを進めたこの先輩達も、彼等の佇まいに自身の過去を重ねたのかもしれない。日本のリスナーもまた、一刻も早くその爆音をこの身で体感したいはずだ。
テキスト:Yuji Kamada