【FEATURES】BEYOND[THE]BLUE Tour 2014 -We The Kings-ライヴレポート@ 6/1 渋谷AUBE
毎年豪華なラインナップで日本のエモ/メロディックパンクシーンを盛り上げているBEYOND [THE] BLUE Tour。本年は4年ぶり、待望の来日となるWe The Kingsをヘッドライナーに迎え、4日間に渡って開催された。2014年5月29日、東京でのWe The Kingsファーストアルバム「We the Kings」再現ライヴを皮切りにスタートした本ツアーは5月30日に名古屋公演、5月31日には大阪公演、そして6月1日にはファイナルとなる東京公演を行い、凄まじい熱量と共にその幕を閉じた。今回は、ツアーファイナルとなった6月1日の渋谷AUBEでの公演の様子を、余すところなくお届けしたい。
この日トップバッターを務めたのは、例年行われているBEYOND [THE] BLUE Tourのサポート・アクトをめぐった壮絶なバトル=Battle of B[T]B Tourを勝ち抜いたLeylineだ。多くの若手バンドがしのぎを削りあうBattle of B[T]Bで見事1位に輝いたと言う期待を裏切らず、スタートと同時にフルスロットルのアツいステージングを見せつけて行く。パワーポップ/パンクのマナーを忘れないやんちゃな一面も見せつつ、彼らの紡ぐアグレッシヴなサウンドで、会場の熱気を最大限に上昇させてくれた。
次にステージに姿を現したのは、今回が3度目のBEYOND [THE] BLUE Tour出演となる神戸出身の4人組エモポップバンド、FIVE NEW OLD。心地良く耳に馴染むエモーショナルなメロディーライン、甘く伸びやかなヴォーカル、ツボを得た絶妙なポップネスと三拍子そろった瑞々しいサウンドでオーディエンスの心を奪って行く。これまでAll Time LowやQuietdriveと言った海外の実力派バンドとも共演してきただけあって、彼らから発せられるエネルギーは圧倒的。曲を重ねるごとに、フロアには強力な一体感が生まれていた。
興奮しきった会場の熱視線に包まれて登場したのは、今回のBEYOND [THE] BLUE Tourに東名阪と参加している注目のポップパンク/スクリーモバンド、YOUR LAST DIARYだ。紅一点のフロントウーマン・Yukaのパワフルなヴォーカルワークと、随所に打ち込みも交えた煌びやかなサウンドの掛け合いが、オーディエンスを一気にまくしたてていく。ところどころヘヴィなリフやリズムを絡ませつつも、あくまでポップにこだわった彼らの見せるエネルギッシュなパフォーマンスに、オーディエンスも手を上げ飛び跳ねステージと同じ熱量のリアクションを示していく。「みんな、笑顔で帰ろうねー!」と語ったYukaの言葉通り、最後までフロアをとことんハッピーな空気に包んでくれた。
YOUR LAST DIARYのパフォーマンスが終了すると、再び会場は暗転。その間も、会場の温度がぐんぐんと上昇しているのが目に見えるようだった。そして大歓声に包まれる中いよいよ、We The Kingsが登場、そのまま “Queen of Hearts” へなだれ込んでいく。レゲエ調のリズムとTravisの甘美な歌声が演出するトロピカルなムードによって、のっけから最高潮の熱気に達した会場は夏真っ盛りのような状態に。フロアから響くはち切れんばかりの大合唱は、これまでいかに彼らがWe The Kingsを求め、このライヴを心待ちにしてきていたのかをはっきりと物語っていた。2曲目には高揚感溢れるメロディーとTravisのハイトーンヴォイスが絡む一度聴けば中毒間違い無しの名曲 “Skyway Avenue”、3曲目には腰に来るようなグルーヴィーなビートと、感情が高ぶり尽くしたかのような熱烈なサウンドに再び巨大なシンガロングが巻き起こった “Any Other Way” と、立て続けにオーディエンスを煽りまくっていく。そして4曲目には、涙腺を刺激する美しいギターの音色から幕を開けるDemi Lovatoとのデュエットソング “We’ll Be a Dream” をプレイ。Dannyの紡ぐ柔らかなリズムとまるで映画のワンシーンを演出するようなロマンティックなギター、そしてTravisの力強く伸びやかな歌声が、息を飲むような情景を作り上げていた。
「次の曲は古いんだけど、すごく良い曲なんだ。さあ、パーティーの始まりだ!」と言うTravisの絶叫で幕を開けたのは、ファーストアルバムからのアンセミックな名曲 “Whoa” だ。爽快感満載のパンキッシュなサウンドととことんキャッチーなコーラスが魅力の “Whoa” だけあって、会場の熱量は再びMAX状態に。汗だくになりながら歌い、腕を振り上げ、飛び跳ねるオーディエンスと、それを受けてますますヒートアップするWe The Kingsのパフォーマンスは、鮮やかな光景を生み出していた。さらに徹底的な美メロと胸のすくような疾走感に体が疼かずにいられない “She Takes Me High”、タイトルコールの時点で大歓声が沸き起こった極上のポップパンクソング “Secret Valentine” と、怒涛の勢いで前半を駆け抜けた。
ここからライヴは後半戦へ。「クレイジーになる姿を見せてくれ!」と言うTravisの合図とともに始まったのは彼自身も最新アルバム「Somewhere Somehow」の中でもお気に入りだと言う “I Feel Alive”……のはずだったが、なんとここで機材のトラブルが発生し、ステージの楽器陣に電気が行かなくなってしまうと言うアクシデントが。しかしTravis自らがDannyのドラムソロを煽ったり、「アコースティックはどう?」と言う提案にも歓声が上がるなど、百戦錬磨をくぐって来たことを伺わせるさすがの立ち回りにオーディエンスの期待感はむしろ増すばかり。ほどなくして電気が戻ると、会場に充満していた熱気は爆発状態に!バンドの期待通りクレイジーなまでのクラッピングとジャンプがフロアをこれでもかとばかりに揺らした “I Feel Alive”、ステージから発せられるポジティヴなヴァイヴと温もりのある壮大なサウンド、そしてオーディエンスの歌声が融合しフロアを暖かく包み込んだ “Just Keep Breathing” を披露し、ますますエネルギッシュに加速していく。
するとここで、Travis以外のバンドメンバーは一旦舞台の外へ。ステージを見つめるファンの目に飛び込んできたのは、ピアノを前に「次の曲は、昨日どうしても演奏してほしいとお願いされて……その時はヤダ、って言ったんだけど(笑)。」と冗談を飛ばすTravisの姿だ。そしてそのまま、流れるようなピアノの音色と共に “Don’t Speak Liar” がゆっくりと幕を開ける。原曲もノスタルジックな色味を纏ったポップパンクチューンだったが、その切なさを最大限に引き出すピアノの音色、そしてどこまでもセンチメンタルなTravisの歌声が、情感たっぷりに響いていく。ファーストアルバムの楽曲をここまでシンプルに、かつダイナミックに削ぎ落とし、ピアノと歌声のみでこれほどのドラマを生み出すその姿は、彼らが今後も常に進化を続け、音楽シーンにおいて必要不可欠な存在であることを示唆しているようだった。
歓声の中再びメンバーがステージに姿を表すと、始まったのは “Say You Like Me” の歌い方のレクチャーだ。しかし当然のことながら、この日集まったオーディエンスにはそんなレッスンは不要。レゲエやスカのテイストも纏った南国ムードな一曲だけに、フロアは体を横に揺らし腕を振り上げ、思い思いに声を張り上げ歌声を乗せていく。それを受けてステージから発せられる力強くも柔らかなサウンドは、まるで彼らの地元フロリダの太陽の下にいるような、ハッピーなムードを生み出していた。そしてここでいよいよ、ライヴはラストナンバーへ。「本当に本当に本当に、みんなを愛してる!どうもありがとう!」と言う言葉とともに、彼らの名刺代わりとも言える “Check Yes Juliet” がスタートする。緻密に計算された究極のグッドメロディーと熱のこもった清々しいステージングにオーディエンスはますます過熱。ここまで13曲を駆け抜けてきたとは思えぬほどの熱狂的な盛り上がりとシンガロングの嵐は、まさにクライマックスにふさわしい光景だった。
一度会場が暗転し再び電気がついた後も、会場の余韻は覚めない。おそらくこの日アンコールの予定はなかったようだが、あまりのWe The Kingsコールに押されメンバーは再びステージに登場。「必ず戻ってくるから!」とファンと誓いを交わし、“Stay Young” でこの日のライヴを締めくくった。
今回は4年ぶりの来日となったがそのブランクはまったく感じさせず、ここ日本でも多くのファンに愛され、また必要とされていることを証明したWe The Kings。会場にいた誰しもが、ライヴが終了したあとも深く残る余韻を感じていたことだろう。彼らがファンと交わした約束が近いうちに果たされることを、切に願うばかりだ。
テキスト:Leyna Miyakawa
写真:Nobuya Fukawa