【REVIEWS】the American Movie – Wear is 〜 青さを解き放ち、胸掻きむしるデビュー作 〜
Released: 9/10/2014 – FASTLIFE
日本国内で、これほどまでに正式全国流通音源が待たれていたバンドも久しくいなかったのではないだろうか。北九州で結成後、2011年に自主制作デモEPを発表して以降、無料配布音源や「BEYOND[THE]BLUE」や「TRY OUT!!!」といったコンピレーションCDに参加。短期間だが活動休止もありながらも着実にその名を広めてきた彼等が、結成から4年にしていよいよ初のフルアルバムをリリースとなった。
青く疾走するイントロから思わず空を見上げずにはいられない王道エモメロ曲“bounce back”、力強いエモ・ポップを爽やかに鳴らす “suitable”。エモやポップパンクと同レベルで彼等の音楽性を形成する重要なファクターである、アメリカンロック要素を前面に出した “ever tell” や “I’ve been fool”。個人的にはSpitalfieldを彷彿とさせるオルタナティヴなパンクのアレンジを持つ “this theory” がツボにハマりまくり。その他にも “getting wide awake” や、スクリームも顔を出すアグレッシヴな “Call me when you fall down”、The Starting Line直系の “I’m sorry and take my hand” といった彼等のこれまでの代表曲達もばっちり収録されている。特にアコースティックで再録された名曲 “tonight, we are all the same” から放出されるエモーションにはため息が零れるレベルだ。
本作は前述の通りデビュー作であると同時に、FASTLIFE RECRDSと契約発表後からだいぶ時間を置いての正式リリースでもある。ファンは勿論、それをじっくり見守っていたレーベルオーナーの温かさも感じるが、待ち望んだ皆を確実に満足させる一枚だろう。同時に、ここからさらに良くなるんだろうなぁという確信的ポテンシャルを頭の中で想像(ムフムフ)出来る作品でもある。ギャグっぽい言い回しかもしれないけど、生涯を通じて大事になる作品っていうのは、こうしたイマジネーションを刺激する一枚な事が多かったり。青く、胸掻きむしられる音を愛する全ての方に聴いて欲しい作品だ。
テキスト:Yuji Kamada