【REVIEWS】Emarosa – Versus 〜 目眩いフロントマン交代劇の果てに 〜
Released: 9/9/2014 – Rise
一躍シーンの最前線へと躍り出たデビューEP「This Is Your Way Out」リリース時のボーカルがChris Roetter。その後Dance Gavin Danceに在籍していたカリスマJonny Craigにボーカルが交代し、Rise Recordsと契約。「Relativity」と「Emarosa」という二枚の作品をリリース後、Jonny Craig(現Slaves) が脱退。ex.Tides Of ManのTilian Pearsonが加入しデモ等を発表していたが、結果TilianはJonny Craigが在籍していたDance Gavin Danceに加入ともう外から見ていると何が何だか良く分からなくなってくる状況に(笑)。そんな中、結局バンドは新ボーカルとしてex.Squid the WhaleのBradley Waldenを迎え、約4年振りとなる最新作をリリースした。
誰もが認めるシーンのカリスマであるJonny Craigが脱退した時点で、余程の器を持った存在でない限り務まらないだろうと誰もが思っただろう。しかしこのBradleyというボーカリストが加入すると聞いた時に、彼を知っているリスナーは誰もが納得したはずだ。前述の通りSquid the Whaleというバンドでフロントマンを務めていた彼は、同バンドでポストハードコアをベースとしながらもオルタナティヴなロックのサウンドの上でR&Bシンガー顔負けの圧倒的ボーカルを披露。EmarosaのキーボーディストであるJordan Stewartも新たなフロントマンを探していた時に「Jonny Craig二世ではなく、バンドにユニークな何かをもたらしてくれる人間が良い」 と話していたが、そこにまさに最適ともいえる人材だったといえるだろう。妖艶かつアトモスフェリックなバンドの世界観は踏襲しつつも、“People Like Me, We Just Don’t Play” やプログレッシヴな “American Deja Vu” といった楽曲の上を、Jonny Craigとはまた違ったエモーションを放出させて唄い上げる様は、これまでのファンを納得させながらも確実に新たなファンを掴む事は間違い無い。美しいファルセットと力強い声の対比が存分に打ち出された“A Hundred Crowns”、グルーヴ感と粘りのあるタメが最高潮に心地よい “Say Hello to the Bad Guy” や “Gold Dust” といった楽曲も紛れもない新境地だろう。
Bradleyが今後もきちんとフロントマンに定着する事が前提、という前置きをしてしまうのが悲しくもあるが、そこさえクリアできればここから確実にネクストドアを開く事を確信する一枚だ。
テキスト:Yuji Kamada