【REVIEWS】Me Vs Hero – I’m Completely Fine 〜 成長し、溢れる自信を叩きつけた傑作 〜
Released: 10/8/2014 – KICK ROCK INVASION
本当にトレンドを取り込むのが上手なバンドだと思う。2007年結成後、世界中で巻き起こったEasycore/Popcoreを筆頭としたポップパンクのニューウェイヴムーヴメントの中、UKの代表格として君臨し続けてきた彼等が、約4年という少し長めのスパンを置いてリリースする最新作だ。それこそ、これまで彼等の音を形容する時に真っ先に出てくるのはFour Year StrongやSet Your Goalsといったバンドだった訳だが、今作は明らかにそれだけではなくなっている。勿論彼等特有のへヴィなリフはそこかしこに散りばめてはいるものの、全体を通して感じるサウンドの方向性は、明らかに前述のパイオニア達が息を潜め出した頃に台頭してきたThe Wonder Yearsを始めとした新世代組に近い感触を持つ。
ほぼ同期であるFireworksが丁度変革期にあった頃のサウンドを彷彿とさせる “Opposites” や “Rush for Gold” といった、ポップパンクである事には間違いないのだがどこかメロウでエモーションを放出する楽曲。そして初期HandgunsやMajor Leagueの様な我武者羅に駆け抜ける疾走感を持った “Skin and Bones” や “Heisenberg” といった楽曲は、現行のポップパンクシーンを意識して作られた事は明らか。ただトレンドに寄るのではなく、“Virtues” や “Past Five Years” といったこれまでの自分達のサウンドを圧倒的なバランス感覚でアレンジした楽曲もあり、これまでのファンを離す事もない辺りが非常に上手い。個人的にはもう少しメロディーに起伏があっても良かった気はするが、“Marks of a Slave” に代表される様にリフや楽曲の展開で全体に起伏を付けるやり方等、妙に納得させられる楽曲が詰まっている。
全ては “Past Five Years” に集約されている気もするが、歌詞もまたこれまで以上にバンドの想いが強く反映されているので是非ゆっくりと噛み締めてもらいたい。前作から約4年、成長し良い意味で肩の力が抜けた一枚だ。
テキスト:Yuji Kamada