【FEATURES】Yellowcard, Newアルバム「Lift A Sail」インタビュー
1997年の結成以降、15年以上に渡って世界中のファンから愛され続けるポップパンクバンド、Yellowcard。胸を鷲掴みにする極上のメロディーと華麗なヴァイオリンが紡ぐ至高のパンキッシュ・サウンドで、本国アメリカはもちろんヨーロッパやアジア、そしてここ日本でも巨大なファンベースを築き上げており、昨今では若手バンドの憧れのバンドとしてその名が上がることも少なくはない。そんな彼らがいよいよ7作目となるフルアルバム、「Lift A Sail」をここに完成させた。Yellowcard独特の美旋律や心の琴線に触れるヴォーカルワークはそのままに、オルタナティヴやエレクトロの要素も取り入れた意欲作となった今作は、ヴォーカル・Ryanのパーソナルな環境の変化が色濃く反映されていると言う。前作「Southern Air」のリリースから約2年と言う間の中で、Yellowcardのサウンドがどのような道を辿り進化し、バンドはどのように成長していったのか?ヴォーカルのRyan Keyに訊いた。
“これまでのYellowcardの作品と比べても、より深みのある音を聴くことができるよ”
──「Lift A Sail」はYellowcardにとって2年ぶりにリリースされるニューアルバムですが、改めて、アルバムが完成してみていかがですか?
Ryan Key(以下Ryan):とても興奮しているよ!このアルバムはYellowcardを新たな方向を示唆してくれるだろうし、この作品によって僕らの新たな章が始まるだろうと思ってる。個人的には、歌詞においてとてもパーソナルな作品になったし、その結果にすごく満足しているんだ。「Lift A Sail」と言う作品が僕らをどこに連れて行ってくれるか、とても楽しみにしているよ。
──「Lift A Sail」はポップ・パンクの要素も持ちつつも、全体を通してオルタナティヴ・ロックが大々的にフィーチャーされており、新たなYellowcardのサウンドを確立した作品だと思います。なぜ、そのような音を取り入れて行こうと思ったのでしょうか?
Ryan:きっかけとなったのは、長いこと僕たちの作品のプロデュースを手掛けてくれている、Neal Avronによるものが大きいね。彼はいつも、僕らが既成概念にとらわれずに、新しいことに挑戦するよう促してくれるんだ。そう言うこともあって、今回のアルバムでは僕ら自身がギターの音色にとても惹かれている90’sのオルタナティヴ・ロックのサウンドに、モダンなポップ・ロックの要素を加えて行ったんだよ。「Lift A Sail」を作っている時は、楽しいことばかりだったな。
──あなた方が一躍有名になるきっかけとなった「Ocean Avenue」以降、Neal Avronはずっとあなた方の作品のプロデュースを手掛けているんですよね。アルバムごとにプロデューサーを変えるバンドも多いですが、長いこと彼とタッグを組み続ける理由をお聞かせいただけますか?
Ryan:別のプロデューサーと作品を作ることなんて、まったく想像がつかないんだ。Nealは現在、メンバーの一人と言っても過言ではないよ。僕らの曲やプロダクションに対する彼のインプットは、Yellowcardがやろうとしていることの生命線でもあるんだ。Nealは何年にもわたって僕らのアルバム制作に携わり、あらゆることを教えてくれた。彼と仕事をする機会を手に入れることができて、Yellowcardは本当にラッキーなバンドだと思っているよ。
──前作「Southern Air」と比べても、よりオーガニックで、滑らかな音色がアルバムの中心を担っているように感じました。
Ryan:うん、まさにそうなっていると思う。アルバム全体としては、これまでのYellowcardのどの作品よりも、よりスロウなテンポになっているんだよ。そうすることによって良い意味で曲の中に空間が生まれ、メロディーや音の重ね方にもこだわることが出来たんだ。あとは前の作品と比べてみるとわかるかもしれないけど、今作はエレクトロの要素をプログラミングに取り込んでいる。でもそこに寄りすぎるのではなく、あくまで自分たちが好きなオーガニック・ロックのサウンドに、絶妙なバランスで配合したいと思っていた。「Lift A Sail」では新たな要素をふんだんに取り入れたから、音質的なリスクも多かったんだ。その分以前の作品と比べて、より深い音を聴くことができると思うよ。
──新たな試みもふんだんに盛り込まれつつ、Yellowcard独特の美しく、キャッチーなメロディーやコーラスワークも健在ですね。その辺りはやはり意識されたのでしょうか?
Ryan:Yellowcardにとって、メロディーは一番集中して作るパートなんだ。常にとても大事な部分だと思ってるから、すべての曲の隅々まで、聴いてくれる人の心に残って行くように、徹底的に作りこんでいるよ。ヴォーカルもギターもヴァイオリンもベースラインも、メロディーが一番際立つように組み立てて行くんだ。
──先ほども仰っていたように、今回のアルバムにはRyanのパーソナルな経験や環境の変化が表れているそうですね。歌詞において、一番影響を受けたのはどのようなことだったのでしょうか?
Ryan:僕と妻は、とても辛い1年半を過ごしたんだ。妻はプロのスノーボーダーなんだけど、2013年の4月にとある事故で脊髄を傷つけ、下半身が麻痺してしまい、長いことずっと苦しんでいた。僕たちは一緒に、ゆっくりと時間をかけて少しずつ、回復への道のりを辿ってきたんだ。君も想像が出来ると思うけど、その期間は僕にとっても妻にとっても、非常にエモーショナルな時間だった。そう言った経験が、「Lift A Sail」の中に自然と反映されて行ったんだ。
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