【REVIEWS】Title Fight – Hyperview 〜 オルタナティヴを通り越し、さらに深遠化 〜
Released: 2/3/2015 – Anti-
AltPress.jp Rating:
初期はLifetimeやKid Dynamite直系のメロディックハードコアを鳴らし、前作「Floral Green」で一気にオルタナティヴへ歩み寄った米アンダーグラウンド最重要バンドの一つ。そんな彼等がいよいよバンドのアーティスティックな側面を爆発させた、約3年振りとなる3rdアルバムをリリースした。FlightPlan、Run For Cover、Revelationと渡り歩いた後、2枚のアルバムをSide One Dummyからリリースしてきた彼等の新天地は何とANTI- である。Epitaphの姉妹レーベルとして、Tom WaitsやElliott Smith、Kate Bush、Neko CaseといったレジェンドともいえるソロシンガーからThe Locust の様な変態ハードコア、その他にもラップやレゲエといったジャンルレスながら素晴らしきアングラアーティストを続々と発信してきた名門でもある。正直Title FightがこのANTI- へ移籍をするというニュースを聞いた時には多少の驚きもあったが、よくよく考えればWilco やCalexico、The Weakerthansといったバンドもリリースしてきた同レーベルだっただけに、新作からの音源が公開する度に妙に納得させられた。
プロデューサーは前作と変わらず、Will Yip。昨今のシーンがオルタナティヴ化している仕掛け人ともいえる人物ではあるが、少なくとも僕が聴いたこれまで彼が手掛けた作品の中で、最もチャレンジしたともいえる。勿論初期からの彼等を追ってきたコアなファンは、要所要所に顔を覗かせるフレーズにニヤリとさせられる音像はあるだろうが、全体としてみればもうこれまでのTitle Fightとは別バンドと言っても良いレベルだろう。オープニングトラック “Murder Your Memory” の深く奥行きのあるサウンドスケープ、そしてそこに溶け込んでいくように陰鬱に広がっていくボーカルは完全にこれまでと別ベクトル。“Chlorine” や “Liar’s Love” では、Ride辺りを彷彿とさせる正にシューゲイザー感満載のロマンチシズム全開な音の重ね方にUSインディーの王道ともいえるフレーズが融合。Dinosaur Jr.やThe Lemonheadsといった90年代USオルタナを回帰させた様な “MRAHC” や “Rose Of Sharon”。同じくローファイに疾走しながら途中途中でThe Smiths辺りの80年代UKロックを想起させる “Trace Me Onto You”、New Orderの様なマッドチェスタームーヴメントさながらのフレーズをオルタナティヴへ盛り込んだ “Liar’s Love”。そのどれもが懐古的に響かないのもまた、バンドのバランス感覚とWill Yipの手腕だろう。決してマジョリティーのある音ではないかもしれないが、ゆっくりと噛み締めながら聴けばまた必ず新たな扉が開くはずだ。
テキスト:Yuji Kamada