【REVIEWS】The Anthem – In It to Win It 〜 説得力を増したメロディー、壮大な世界観 〜
Released: 1/28/2015 – bullion
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イタリアンポップパンク界を代表するVanilla SkyのBrianがプロデュースした事で、世界中のメロディックファンから注目を集めるデビューとなった彼等の約3年振りとなる2ndアルバムがリリース。あまりweb更新が無い故に他国に比べてとにかく情報が入ってこない辺りは相変わらずだが、前作リリース後にメンバーの脱退劇があり3ピースでの活動続行で制作。今作もデビュー作に続きBrianのプロデュースとなっているが、これがまた想像以上にVanilla Skyを彷彿とさせる素晴らしいプロダクションと進化した世界観が詰まっている。
「勝つ為に」と名付けられた、今作のタイトルとリンクした曲名を持つイントロ曲 “Winners Are Coming”。そしてその重厚なファンタジー映画を彷彿とさせる世界観から、そのままゴスペリックなコーラスを残したオルタナティヴナンバー “Cripples,Bastards and Broken Things” へ。続くも内向的でエモーショナルな入りから、低温なAメロからどんどんと盛り上がりを見せる “Blame It On Yourself”。そして爽やかで甘酸っぱい “Like You’re James Dean” でやっと前作の世界観も顔を覗かせたと思えば、再びミニマルなサウンドとバンドならではのダイナミズムが共存する “The Fall”、“War”、“Come Hell or High Water” と続き、確実にネクストレベルなサウンドが展開。先行で発表されたリード曲 “West Coast Pride” にて鳴らされた、最上級にキャッチーなポップパンクサウンドが作品全体に詰まっている事を予想していた方も少なくないだろう。勿論ピアノの音色と青空を思わせるコーラスワークを持った “Spirit” や、切なくも力強い “Deep Dark Secrets” といった前作系譜の楽曲も収録されている。しかし何度も聴く度に、既にバンドが見ている所は遥か先なのだと思える説得力に溢れている。それはまるでVanilla SkyやYellowcardの様に、パンクバンドからロックバンドへ変化していった事とシンクロするのだ。さらに前作のイメージを激変させる事無く、あくまで自然にその進化とこれまでを共存させている辺りは、Brianの手腕が発揮されているに違いない。まさにタイトル通り、バンドの強き宣戦布告とも取れる想いがしっかりと説得力を持って鳴らされた好盤だ。
テキスト:Yuji Kamada