【FEATURE】In Her Own Words / Stickup Kid ICE GRILL$ TOUR 2013 ライヴレポート@9/29 新宿NINE SPICES
注目のリリースだけでなく、精力的に所属アーティストを来日させているICE GRILL$(以下IG)の今年2度目となるツアー「ICE GRILL$ TOUR 2013」が開催。CHUNK! NO CAPTAIN CHUNK!に続くレーベルの稼ぎ頭であるIN HER OWN WORDSが約一年前の初来日に続き、新作発表後初となる再来日、そして今年IGからデビューしたUSで注目度急上昇中のSTICKUP KIDの2組を迎えてのツアーとなった。今回はツアー初日の新宿NINE SPICESにお邪魔した。
毎回ジャンルレスに各シーンの注目国内サポートアクトが参加するIG Tourだが、今回もその例に漏れず素晴らしい国内バンドが集結。まずトップバッターは、10/23に国内新鋭レーベルSTANDTALLからデビュー作のリリースが決まっているWe Are The Champion$からスタート。これまでも幾つかのコンピレーション等でその音を聴く事が出来たが、実際のLiveでは音源とは比較にならない程音圧が厚い。それにより多少Vocalの声が聴き取りにくい難点はあったが、ここからさらにLiveを重ねていく事で良くなっていく事でしょね。今後もまだまだ進化を遂げそうなPopcore/Easycore界の要注目バンドなので、是非新作もチェックをば。
二番手はこの日出演したバンドの中で唯一正統派のモダン・スクリーモ/ポストハードコアを鳴らしたTRANSLATIONS。BLESSTHEFALLやTHE WORD ALIVE直系のUSモダン・スクリーモからの影響は、サウンドだけでなくパフォーマンスからも如実に溢れまくり。最初はややこの日の他の出演バンドと比較するとアウェーなサウンドだった為にオーディエンスの反応に苦戦していたが、その分気迫はトップクラス。SE含めステージングはこの日最高峰だったし、STICKUP KIDのメンバーもフロア最前列でかなりノリノリ(笑)。GO WITH MEからリリースされた新作収録のリード曲「Storm Chaser」はやはり名曲で、徐々に会場は熱気に包まれていく様は圧巻だった。
続いての出演はDEACON。また彼等の登場で会場の空気は一変した。LOYAL TO THE GRAVEやCLEEPOUTといった錚々たるハードコア・バンドのメンツからなるだけあってその音の破壊力と説得力、そして真髄さは圧巻の一言。短いステージだったが、極悪なピット含めて盛り上がっていた。
4バンド目は一番手We Are The Champion$のメンバーも所属するモダンNew SchoolバンドWill You Rememberの登場。DEACONとはまた違った超ハイブリッドなNew Schoolサウンドは、海外勢で例えるとYOUR DEMISE辺りでしょか。Vocalがステージからガンガンフロアへ降りてピットを煽りまくる事によって否が応にも盛り上がりまくり。途中TRANSLATIONSのVocalもステージに登場し、最後は壮絶なモッシュピットを形成。
そして国内アクト最後を務め上げるのがBACKDATE NOVEMBER。2009年東京町田にて結成されてから、ここ一、二年でもだいぶその名を見る事が多くなってきた彼等。実際Liveを見たのは今日が初めてだったが、このバンドが破格にかっこよかったなぁと。一曲目からフロント4人のコーラスが炸裂。ファストなメロディックを軸にしながらも、爽快なメロディーと時折除かせるエモーショナルなアルペジオの音色が非常に印象的。国外国内問わず全メロディックファンから愛されるべきポテンシャルを持っており、11月には新たな音源をリリースという事なので今後も大注目す。
これまでに無い程の素晴らしい国内勢のパフォーマンスを終え、いよいよ海外からのゲストSTICKUP KIDの登場。それまでサポートアクトのパフォーマンスをフロアで見ていた時とは全く違うオーラを放出しながら疾走曲 “The Depths Of Me” がスタート。CDに比べると図太いボトムが印象的なサウンドと、その音に身を委ねる様にユラユラと身体を揺らしながら一つ一つの言葉を発するTonyの自然体のパフォーマンス。続くは国内盤ボーナストラックに丸々収録された前EPから “You Are Captain Hook”。ステージングは全体的に派手とは言えないながらも、実直に鳴らされる音の数々は非常に説得力がある。そして個人的に新作で大好きな楽曲だった “What’s Missing” へ。彼等の他の楽曲に比べるとSAVES THE DAY辺りにも通じる“哀愁”というよりは“郷愁”という表現がぴったりのエモーショナル全開なミッドチューン。再びEP収録のパイロット曲 “Breathing” や “Dreaming of Kenny Rogers” といった疾走とエモーショナルパートが交錯して行く彼等の真髄を鳴らした後、最新作で最もオルタナティブからの洗礼を如実に放出した “Good People In A Place I Hate” へ。さらにこの後まさかやるとは思わなかった彼等の1stフル作から “You’re Killin’ Me Smalls”!!これ演られちゃうと他のも聴きたくなっちゃうけどそれは淡い期待としつつ(笑)、次は “This Is Over” へ。
この曲もそうだが、昨今のUSのアンダーグラウンドシーンは本当にポスト・グランジやポスト・オルタナティヴなサウンドがトレンディー。スマパンや90年代初頭のシアトル周辺…そう、SUB POP辺りのバンドのサウンドをメロディックと融合した様なささくれ立ったギターサウンドが特徴的だ。同じくIGからリリースされているCITIZENSや、12月から再び始まるIG Tourで来日を果たすDAYLIGHTを筆頭にサウンドの変化はここ数年、シーンの中で顕著に表れている。彼等も然りだ。あの頃のサウンドを体現していない若い世代にはどう届くのか、今後のシーンの動向も含めて興味深い。
と、そんな事をメモしていたら再び1stフル作から “Born In The Vault, Die In The Vault”!まだ彼等がEasycoreだったりPopcoreのシーンの中に括られていた頃の楽曲だがやはりアガるもんはアガるっていう(笑)。会場も相当熱気溢れてきた中、そんな熱を沈めるかの様に放たれたのが最新作一曲目であり、彼等の成長と作品の方向性を決定付けた “Lost”。元々この曲はタイトル通りその喪失感や虚無感に鳥肌が立つ曲だったが、生で聴くと何故か温かさを感じる。これこそLiveなんだろう。音源だけでは感じられない楽曲の別の表情がひょっこりと顔を出す、なんてのは良くあるお話。完全に自分達の世界に引きずり込んだ後、最後は “Lighthouse” で締め。“Lost” での余韻を崩す事無いイントロから始めるが、硬派に疾走し、最後はエモーショナルに壮大に終わる最高のチョイス。“Chariot” や “Keeping My Distance” 辺りも聴きたかったが、それは次の来日時の楽しみにしておこうっと。
そしていよいよ大トリのIN HER OWN WORDSの登場だ。前回の来日後、Vocalの脱退劇があったが新たなヴォーカリストJoey Fleming加入後、そして絶賛される新作発表後、初となる来日故期待も大きかった。
最新作の一曲目 “What Does Your Fortune Cookie Say?” からLiveはスタート。正直、新ヴォーカルJoeyは、MCだったりパフォーマンスだったり水を飲むタイミングだったり、この日は最後までまだまだ未熟なステージングではあった。序盤は彼のヴォーカルに引っ張られる形でイマイチ演奏にも整合感はなかったのも事実。2曲目にして彼等の代表曲 “Brand New Me” ではパイルオン大会で会場は大盛り上がりだったが、最新作を聴いていてなんとなく感じていたスクリームも彼の声質的には辛そうだった。しかし次に演奏されたのは前回来日時に1st作を購入特典として配布されていたDemoからこれまた名曲 “Timeless”。これが聴きたかったと言わんばかりにさらに熱気を増したフロアはパイルオン&ピット祭。その後 A DAY TO REMEMBER直系のブルータル・アンセム “With or Without You”、1stで最もPop Punkインフルエンスな “We Fight!” 、再び最新作からシリアスに疾走する名曲 “Losing Sleep” と彼等の振り幅を存分に叩き付ける選曲。
Joeyに厳しい事を言ったが、今後の輝かしい未来を期待しまくれる要素も沢山あった。スクリームが出きっていない分クリーンで唄うパートはそのポテンシャルが最大限に引き立つ。それを完璧に証明したのはこの後演奏された最新作収録の “Everyone I Used to Trust” のアコースティックVer.。この時の彼の声は完全に本領発揮であり、あまりにも美麗かつエモーショナル。本当に神掛かっていたレベルで、オーディエンスからも賛美の声が多数あがっていた。後で聞いたが、彼はまだ若干18歳。これからのヴォーカリストとしての道が輝きまくっていた瞬間を目の当たりにして、期待しかない。
1stで最も壮大な展開を持つ “Rayman Always Wears Raybans”、そして “Cinco De Mayo” と続いた後に放たれたのが、個人的に待ちに待っていた “Reverie”!!!最新作でも群を抜く、切なくもキャッチーなリフとメロディーで疾走する鬼名曲。パイルオンやモッシュピットが出来る楽曲ではないけれど、心に刻まれるべき一曲。生で体感して改めてその楽曲の力に心震わされた。 ラストはPopcoreファン悶絶の “Headed For Splitville”。強烈なブレイクダウンの連続に、最後は横モッシュも2stepもなんでもありの極悪ブンブン大会で本編終了っした(笑)。
アンコールを求めるコールの後、登場したメンバーが演奏したのは何とBlink-182の “Josie”!元々Blink-182とNew Found Gloryに影響を受けてスタートしているバンドだけに、オーディエンスにとってもバンドにとってもこのカバーで盛大にオーラスを迎えられた事は感慨深かったであろう。
既に完成されているバンドも、今後に期待出来るバンドも含めてまた見たいと思わせるアクトが満載の一夜だった。IGはまだ今年走り続ける。11月からはCHUNK! NO CAPTAIN CHUNK!とMAJOR LEAGUEの待望の再来日ツアー。そして12月には前述もしたDAYLIGHT、さらにはKOJIをサポートにMAN OVERBOADの再来日ツアー。両方のツアーにAFTER TONIGHTも参加する。さらに極秘情報だと、まだ年明け以降も嬉しすぎる来日もあるかもしれないとの事なので、これからもIGからまだまだ目が離せそうにない。洋・邦問わずどの会場も注目のアクトが揃っている事だろう。詳細は下記リンクからチェックして、近くの公演には是非足を運んで欲しいと思う。
MAN OVERBOARD / DAYLIGHT / KOJI / AFTER TONIGHT Japan Tour 2013
CHUNK! NO, CAPTAIN CHUNK! / MAJOR LEAGUE / AFTER TONIGHT Japan Tour 2013
テキスト:鎌田 裕司 a.k.a. わいけ
写真:Nobuya Fukawa
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