【REVIEWS】Get Scared – Everyone’s Out To Get Me
Released: 12/25/2013 – KICK ROCK INVASION / Fearless
人口の約7割がモルモン教徒という、敬虔なクリスチャンが数多く住んでいる米ユタ州。その宗教的な兼ね合いから、ロック、とかく激しい音楽のシーンに対しては眉間にシワの入る人種の多い土地であるらしく、音楽シーン自体が全米でも屈指レベルに小さい。そんな風土にヘイトとアゲインストを持ち、頭角を現したのがThe Usedである。2002年デビュー後の活躍はご存知の通りであるが、そのパイオニアが空けた風穴からすぐに次なるバンドが出てくる事は無かった。そして2006年結成後、ほぼ無名ながら屈する事無くコンスタントに活動する事でファンベースを築き上げたバンドが遂に登場したのが彼等。Demoリリース後、2009年にようやく初EP「Cheap Tricks and Theatrics」を発表。この作品からPVが制作された “If Only She Knew Voodoo Like I Do” のB級ながら印象的で、特にNicholas MatthewsのVocalistとしての存在感は抜群であった。これはThe Usedの再来だと当時興奮した記憶があったが、その後の活動での大きなトピックはなかった。しかしその光り輝く原石は広く届き渡っていたのであろう、2011年に突如ユニバーサルからメジャーデビュー。プロデューサーにThe UsedやStory Of The Yearを手掛けたJohn Feldmannを迎えた1stフル「Best Kind Of Mess」は、ここ日本でも輸入盤のみながら大ヒットとなった。
大きく飛躍したバンドだったが、その後フロントマンNicholas Matthewsがまさかの脱退。それと同タイミングでメジャーからドロップ。すぐに新Vocalを加入させ、自主レーベルからEP「Built for Blame, Laced with Shame」をリリース。作品はBillboard Heatseekers chart初登場20位ではあったものの、やはりNicholas Matthewsの穴は埋められなかった感は大きく、このままフェイドアウトしてしまうのでは…と不穏な空気は拭えなかった。
しかし、シーンはまだ彼等を見放さなかった。その翌年Nicholas Matthewsが電撃復帰を果たしたのである。そしてそれを機にインディー最王手であるFearless Recordsとの契約を勝ち取り、リリースされたのが今作。
先行で公開された“Told Ya So”でのEscape The Fateを彷彿とさせるメタリックでヘヴィなイントロから、一気に疾走感あるサビへの展開。これまでの彼等の世界観を構築していた【デカダン】や【ゴシック】を踏襲しながら、決して退廃的にではないハイブリッドなサウンドに仕上げているのは、Panic! At The DiscoやSaosinを手掛けたプロデューサーErik Ronの手腕の賜物であろう。パワーポップの跳ねたリズムを全面に出し、バンド史上最もキャッチーな楽曲となった“For You”。1stフル収録 “Voodoo” の世界観をさらに進化させた “My Nightmare” や “Stumbling In Your Footsteps” 等、先日コラムを書いた『シアトリカル』の要素も過去作とは比べ物にならない程強くなっている。“The Strangest Stranger” やPVが制作された “Badly Broken”、“God Damn Liar”、アルバムの大半を占める疾走感ある楽曲からエモーショナルなミッド・バラードまで、その楽曲のテンポ問わず要所要所で先駆者であるThe UsedやMy Chemical Romance等の影響を随所に挟んでいる為、この辺りが好きな方は間違いなく悶絶するであろう。僕も完全に悶絶しました、はい(笑)。
前述した通りパイオニア達の系譜にはあるものの、メタリックさとハイブリッドさを手に入れ、今最もトレンディーなシアトリカルな世界観を加えた今作。国内盤に先駆けて発売された輸入盤、本国でさらなる多くのファンを獲得する事だろうと思っていたが、何とBillboard Heatseekers chart初登場1位!!シーンは、再び大きく動く可能性大だ。個人的にもこれはかなりオススメ。
テキスト: 鎌田 裕司 a.k.a. わいけ