【REVIEWS】Bullet For My Valentine – Venom 〜伝統と新機軸の合間を射抜く〜
Released: 8/19/2015 – Sony / RCA
AltPress.jp Rating:
これまでリリースした4枚の作品がトータルで500万枚以上のセールスを記録。今やその名を知らぬ者はいないメタルバンドへと成長した彼等が放つ5thフル。2003年からバンドを支え続けたべーシストJason “Jay” James が2015年に脱退。現在は同じUK出身のであったex. RevokerのJamie Mathiasが加入しているものの、本作はフロントマンであるMattがベースを弾いている。制作前インタビューでは「PanteraやDeftonesを手掛けたTerry Dateとやる事を考えている。Scream Aim Fireからスラッシュメタルの要素を復活させるだろう」 とMattは語っていたが、プロデューサーはここ二作を手掛けていたDon GilmoreからTerry Dateへのバトンタッチではなく、1st「The Poison」と2nd「Scream Aim Fire」を手掛けていたColin Richardsonとなっている。
不穏でノイジーなオープニングのイントロデュース “V” から、強烈なアグレッションで雪崩れていく “No Way Out”。一気にエモーショナルに展開していくサビも印象的だ。続く “Army of Noise” では前述のインタビューでMattが語っていた通りスラッシーに疾走。メタリックなリフが炸裂する “Broken” やツインリードが楽曲をグイグイと引っぱっていく “Harder the Heart”。テクニカルなフレーズが冒頭から耳を奪う“Skin”。彼等の武器が全て叩き込まれたともいえる最高にクールな楽曲に仕上がった “Pariah”。こうした十八番とも言うべき楽曲も収録されつつ、nu-metalにも通じるメロディーラインを持った “Worthless” や “You Want A Battle?(Here’s A War)”。そしてタイトルトラックにもなっている “Venom” でのDeftones的奥行きあるサウンドスケープを持った楽曲あたりは、Terry Dateとやりたかったのだろうなと勘ぐってしまうバンドの新たなる挑戦といえるだろう。5枚目となるだけにもう少し新鮮なメロディーラインを産み出しても良い気はしたが、トラディショナルなファンには間違いなく刺さるであろう。加えてどの曲もコーラスワークにこだわりを見せているのは伺えるが、全体的にはもう少しオーディエンスとの一体感を膨らませるシンガロングパートがもっとあったら、という印象は受けた。いずれにせよ初期からのファンも唸らせ、新たなファンを獲得するというベクトルにおいては及第点以上の貫禄ある一枚。
テキスト:Yuji Kamada