【REVIEWS】Into It. Over It. – Intersections 〜 「エモ」、「インディー」、「シンガーソングライター」を超える 〜
Released: 1/18/2014 – Stiff Slack / Triple Crown
相変わらず自由だ。そしてその自由さが最高に彼らしくて良い。先日のOWENとの来日、加えてそのOWENとスタートさせたTHEIR/THEY’RE/THEREでの来日や作品リリースといった活躍でさらなる飛躍を迎えたEvan Thomas Weissのプロジェクトの最新作。リリースも作品ごとにCount Your Lucky StarsやTopshelf、No Sleep…etc、数多くの名門レーベルからリリースして来たが本作はFireworksやMoving Mountainsが所属するTriple Crownからのリリース(国内盤はStiff Slack)となる。
前作「Proper」がEd Roseを迎えた90’sエモのリヴァイバルの一つの答え、つまり自身のルーツを辿る『過去』とするならば、今作はまさに『現在』。エモーショナリズムをポストした先に鳴り響く、彼の眼に映るインディーサウンドは等身大で温かく心地よい。前作程のオルタナティヴさと派手なエモーションはないので、一聴すると物足りない若き世代もいるやもしれない。が、アンサンブル一音一音の鳴りの美しさや奥行き、バンドサウンドの後ろに鳴り響く様々なエフェクト等、真っ直ぐ向き合えば向き合う程に彼の天の邪鬼な程に凝ったプロダクションが詰まっている。イントロのリフを聴けば一発でシカゴ一派の影響を出したと分かる “New North-Side Air” やOWEN的アルペジオ協奏曲に彼等らしいエモーションとエフェクトを加えた “A Curse Worth Believing”。前作の90’sエモ・リヴァイバルの路線を唯一踏襲していながらも、Saves The Dayの最新作にも通じる洗練されたサウンドと軽やかさを持つ “Spatial Exploration”。No KnifeやFurther Seems Foever辺りのジリジリ感とセンチメンタルながら温かいメロディーと融合させた “A Pair Of Matching Taxi Rides” なんかは過去と未来を行き来する彼にしか鳴らせない音だろう。
無論どの曲も、美しい旋律。サウンドとしての幹は揺るがない作品故、曲毎にここまでの振り幅を持てるのも確信犯なのだろう。これまで以上にリラックスして音を楽しんでいる彼の姿が、脳裏に浮かぶ一枚。
テキスト: 鎌田 裕司 a.k.a. わいけ