【REVIEWS】Against Me! – Transgender Dysphoria Blues 〜様々なものを超越したパンクの真髄〜
Released: 1/21/2014 – Total Treble
2002年デビュー後、フォークやブルース、アメリカンロック要素を独自の解釈でパンクと融合してきたフロリダが産んだポリティカル・パンクバンドの最新作。VocalであるTom Gabelが妻と結婚したまま性転換し、女性として生活することを発表、Laura Jane Graceとして名前を変えるというアナウンスメントも話題に。そして昨年11月末に開かれたRed Bull Live on the Road Final Stage 2013では、2008年のSummer Sonic以来の来日を果たしStrung Outと共演。そんな熱冷めやらぬ絶好のタイミングでの新作発表となった。
ロールする躍動感満載のドラムとカントリー調のコード進行が温かさを醸し出す、かなり前からLiveでは演奏されていたタイトル曲 “Transgender Dysphoria Blues” で幕を開ける本作。2分にも満たない短い楽曲ながらも、ロックンロールの持つシンプルさとハードコアの持つ爆発力を見事に集約した “Drinking With The Jocks”。どこかThe Vaccines やPalma Violets 等のUKバンドの要素とMaritimeの持つエモーショナルで温かいフレーズを融合させた様な “True Trans Soul Rebel”。パワーポップとスケール感のあるサウンドを共存させた “Black Me Out”。Kasabianの様なポストパンク的かつ実験的サウンドメイクを施しながら、ポリティカル全開の歌詞を唄い上げる “Obama Bin Laden As The Crucified Christ”。そして “Unconditional Love” や “Dead Friend” 等、ストレートなポリティカルさだけでなく、その他にも身近に感じる事を題材にしているのも新鮮だ。女性ホルモンを注入しているという事で声質が変わる事も危惧する声もチラホラあったが、全くもって不変だ。むしろここ数年で様々な困難を乗り越え、考え、多くの経験をしたからであろう。今作のメロディーラインにも表れているが、熱さだけではない包容力と深みすら加わったLaura Jane Graceの声はさらに高く響き渡り、僕達の心に届くはずだ。若い世代にこそ聴いて欲しい一枚。
テキスト: 鎌田 裕司 a.k.a. わいけ
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