【REVIEWS】Move Out West – All’s Well On The Eastern Front 〜 不純物ゼロのポップネス 〜
Released: 1/29/2014 – Twilight
活動初期をThe Early NovemberのフロントマンAce Endersにサポートされた事でも話題となった、コネチカット産の最新作。国内盤化された前作「On The Run」でも、多くのバンドが様々な飛び道具を放つ中、その真っ直ぐで唄心溢れたメロディーで勝負。それが逆に素晴らしい輝きを放つ結果となったが、「On The Run」がこれから続くバンドの軸は決して曲げない、というバンドの確固たる意思表明にもとれるタイトルであった様に、この新作もバンドの軸はまったくブレていない。その貪欲なまでの『良いメロディー』への探究心が詰まっている。
2013年のハロウィーンに先行でPVが発表された “Magic Eight-Ball” から幕明け。このバンドらしいアメリカン・ロックをベースに、力強いバースが絡んでいく、バンドの第二章を告げるに相応しい楽曲。UK耽美派を思わせる壮大なコーラスが印象的な “God Damn” や最新シングル “Where I’m Supposed To Be” は光の反射する水面を思わせる繊細で美しい名曲も収録。加えて、バンドのもう一つの重要なファクターであるフォーキーさを打ち出した“Find That Girl”や、同じくアコースティックなサウンドをメインにしながらも、よりストレートなエモーションを打ち出した “Dare To Be Alone”や“Whiskey & Words of Encouragement”。そして本編ラスト “Without A Parachute” では、これらの要素を全て集約した見事なハイライト的展開を鳴らす。余分なアレンジを極力排除したのであろうネイキッドなプロダクションで、自身のメロディーの良さを大きく際立たせているのも流石の一言。日本盤ボーナストラックに収録されている2曲は、今作の中では最もバンドサウンドやアレンジを加えている2曲のAcoustic Version。改めてこういったシンプルなアレンジで聴く事によって、バンドの美しいメロディーを再確認出来る。
とんでもなく派手なサウンドやメロディーはない。しかし、メロディーの良さを二の次にし、飛び道具ばかりが注目されがちなシーンの中、Rookie Of The YearやNever Shout Neverといったアーティストと並ぶ『メロディー復権』への鍵を持つ希少な逸材なだけに、より多くの心あるリスナーへ届いて欲しい一枚だ。
テキスト: 鎌田 裕司 a.k.a. わいけ