【REVIEWS】The Used – Imaginary Enemy 〜 「初期衝動」、「円熟」の見事な調和 〜
Released: 4/2/2014 – KICK ROCK INVASION
前作「Vulnerable」からHopelessへ移籍以降、未発表曲を追加したデラックス盤「Vulnerable (II)」やEP「The Ocean Of The Sky」の発表と、コンスタントに作品を発表してきた彼等の6枚目となる最新作がリリースされた。
本誌インタビューでJephが話していたようにモダンなプロダクションで制作された「Vulnerable」と、活動初期以来の衝動を詰め込んだ「The Ocean Of The Sky」という対極的な二枚を繋ぐ一枚だ。
フロントマンであるBertが久々にスクリームを披露した事で話題となったリードトラック “Cry” だけでなく、ノイジーなAメロから一気に疾走していく “Revolution”、初期の彼等を彷彿とさせるキレッキレのエモーショナルナンバー “A Song To Stifle Imperial Progression (A Work In Progress)” 等、久々に感情大爆発系の楽曲も収録。しかしそういったアグレッシヴな要素だけでなく “Light With A Sharpened Egde” や “Sick Hearts” といった過去の名曲達の系譜を継いだ、切ないメロディーに胸が締め付けられる “Make Believe” や美しいバラード “Evolution”、“Kenna Song” といった彼等らしいメロディアスな楽曲も満載。さらにはお洒落な2ビートと、哀愁感のあるコーラスワークにスクリームが絡むタイトルトラック “Imaginary Enemy” といった新境地も披露。サウンドプロダクションや楽曲の世界観はこれまでの彼等の軌跡を総ざらいしたものになっているが、そこにしっかりと実験的かつ新たな世界観を混ぜ込む辺りは流石の一言だ。
ただでさえバンドのここ数年の溢れる創作意欲には脱帽ものだったが、今作はレコーディングに取りかかった当初にあった楽曲を全て捨て、再び一から作り上げたサウンドだという。そのエピソードに驚くと共に、だからこそこれだけ衝動感に溢れながら、荒々しさだけでない美しい作品を作り上げられたのだろう。今作もまた安心と興奮を体感出来る。
テキスト:Yuji Kamada