【REVIEWS】Taking Back Sunday – Happiniess Is 〜 それぞれの幸せの答えとは 〜
Released: 4/2/2014 – KICK ROCK INVASION / Hopeless
二枚のアルバムをメジャーレーベルでリリースしてきた彼等だが、遂に彼等もそのメジャーを離れ、インディーレーベルの最大手であるHopelessと契約。ここまで大きなバンドになると、自身でしっかりハンドリングできるバンドはインディーでやる方が有益になった昨今とても賢い選択だとも感じる。そんなまさに「心機一転」という状況下で初めてリリースされる新作だが、これが驚く程に変な気負いや無駄な力みを感じさせない自然体っぷり。その様はむしろ貫禄すら感じる程だ。
全体的にはバンドの2nd作「Where You Want To Be」に収録された代表曲達ともリンクする、スケール感溢れるミッドテンポで温かなサウンドと世界観が印象的。先行シングル “Flicker, Fade” に代表される様に、多幸感と特有の滲み出るエモーションを見事にバンドサウンドとして昇華させた楽曲がとにかく耳に心地良い。その他にも春の訪れを告げるかの様な “Stood A Chance” やオルタナティヴな “They Don’t Have Any Friends”、そしてパンキッシュな “Like You Do” までそれぞれの表情を持ちながら疾走する楽曲達。80’sシンセの冷涼感あるフレーズで立体的なサウンドスケープを作り上げる “All The Way”。初期からのギタリストでありツインVocalの片割れだったJohn Nolanが、2010年にバンドに復帰以降最も彼をフィーチャーすると同時に、その初期のニュアンスを前面に打ち出した “Better Homes And Gardens”。トピックは満載だ。細部まで聴けば過去最高に様々なアプローチが詰まっているものの、とにかくその琴腺を震わす天才的なメロディーセンスに耳を奪われる。
もはや初期の様な直接的なエモーショナルなアプローチは皆無だが、メジャーを経験する事で培った懐の深さを伸びやかに披露。アグレッションを期待して聴くと物足りなさは感じるだろうが、この新たなる第一歩を踏み出す事への喜びを、バンドなりに表現した様なサウンドに晴れやかな気持ちになる。聴く人によって万華鏡の様に形を変え、瞬間瞬間の幸せを浮き彫りにする。そんな、リスナーの心を映した合わせ鏡の様な作品が完成した。
テキスト:Yuji Kamada