【REVIEWS】Being As An Ocean – How We Both Wondrously Perish 〜 ポストハードコアならぬポスト激情 〜
Released: 5/6/2014 – InVogue
2011年に米カリフォルニアで結成されて以降、数曲のデモと地元を中心に行なわれたLiveで即座に話題騒然となった彼等。InVogue Recordsと契約後に発表されたデビュー作「Dear G-d…」はBillboard Top Heatseekersにて初登場27位を記録。地元の先輩格であるTouché Amoréを筆頭にPianos Become the TeethやLa Disputeといった、ユーロを中心に巻き起こったスクリーモ・リバイバル(日本では次世代の激情シーンと語られた) と共鳴したバンド達に続くニューヒーローの約二年振りとなる新作が発表された。
2013年にリズムギターとドラマーが脱退。惜しまれながらも解散したUK産、The Elijahのギタリスト兼クリーンパートを務めたMichael McGoughとex.Sleep PatternsのConnor Denisがドラマーにそれぞれ加入してから最初の音源となる。
フロントマンJoel Quartuccioのスクリームとスポークンワードを巧みに使い分けるボーカルスタイルはバンドの大きな武器であった訳だが、そこに新加入したMichaelのクリーンパートが入っていく事により、さらに多彩な展開をみせていく “Mediocre Shakespeare” や “Death’s Great Black Wing Scrapes The Air”。American Footballや一時期のPolyvinyl Recordsのバンド達にも通じる、虚無感あるトロンボーンの音色が耳を奪う “Mothers”。そして圧倒的叙情エモーションを持ったリフが胸を掻きむしる “L’exquisite douleur” 等で顕著だが、プロダクション含め前作以上にクリアでモダンなポストハードコアなサウンドメイクになっており、クリーンパートがより栄える印象を受ける。その反面、前作のどうしようもない絶望感が薄れてしまった事は個人的に少し残念だが、バンドの世界観を崩しすぎる事なく明らかに表現の幅をと間口を広げた事は間違いない。先駆者が作り上げた激情のシーンを飛び越え、また一つ新たなハードコアの可能性を押し広げた素晴らしき一枚でもある。
テキスト:Yuji Kamada