【REVIEWS】Tigers Jaw – Charmer 〜 渋みと深みを増したインディーサウンド 〜
Released: 6/3/2014 – ICE GRILL$ / Run For Cover
初期は90’s Emoのリバイバル要素とパンクの持つ衝動を叩き付けるサウンドを奏でていた米ペンシルバニア産の約4年振りとなる最新作。前作「Two Worlds」リリース以降、7-inchやヴァイナルのリリースを重ねる度によりオルタナティヴなサウンドへと進化していった中、昨年2013年にメンバーが大幅に脱退してしまっただけにどうなるか見守ると同時に、どこか安心感もあったのはこれまでの作品の説得力があったからだろう。盟友Title Fight等を手掛けるプロデューサーWill Yipを迎えてレコーディングされた本作は、やはりその安心感をさらに深いものとした。
アコギ一本で搔き鳴らされるトラディショナルなフォークソング “Cool” から幕を開け、Moogサウンドを纏い一気にオルタナティヴに疾走していく “Frame You”や“Slow Come On”。Nirvanaを彷彿とさせる単音リフに哀愁ある美しいメロディーが絡んで行くタイトルトラック “Charmer”。ポスト・シューゲイザーともとれる白昼夢 “I Envy Your Apathy”。哀愁すら超越し、焦燥と虚無を見事に共存させたコード進行が印象的な “Soft Spoken” からはEngine Downの様な香りもほのかにしたり。ぶっきらぼうに聴こえるかもしれないが、必要以上にエモーショナルになりすぎないボーカルスタイルは各楽曲の世界観とマッチしており、要所要所に散りばめられた二人のコーラスワークも作品全体を美しく引き立てる。全体的に落ち着いたサウンドではあるが、アコギの鳴り一つ一つ、バンドサウンドの緻密なアンサンブルに耳を傾ければ傾ける程ハッとさせられるのだ。Superchunkの様な温かくもセンチメンタルなメロディーと、Grandaddy辺りのLo-Fi感を今のUS最前線で鳴らす感性は間違いなく至宝といえる。アートワークもため息の出る一品。是非手に取りながら聴いて欲しい。
テキスト:Yuji Kamada