【REVIEWS】Basement – Colourmeinkindness 〜 時代はいよいよ一周した 〜
Released: 7/23/2014 – ICE GRILL$ / Run For Cover
昨年2013年に来日したDaylight(現Superhaven) しかり、パンクやエモ界隈のバンド達がどんどんオルタナティヴなサウンドへシフトしていっているのは今や周知の事実だと思うが、その引き金となったのはUSでいえばTitle FightでありUKでいえばこのBasementだろう。2009年に結成され、初期は彼等もまた泣き泣きのEmocoreとメロディックハードコアを融合させたサウンドを鳴らしていたが、そこから作品を重ねる毎にオルタナティヴ化。元々2012年にリリースされていた今作はその圧倒的な説得力と水面下では爆発寸前となっていたオルタナティヴリバイバルの流れで、それをリアルタイムで体験していなかったキッズの耳にもかなり斬新に刺さったのであろう。結果UKとUSだけで1万枚を超えるビッグヒットとなり、トレンドを大きく手繰り寄せた事は現在のシーンを見ても明らかだ。しかし、その絶頂のタイミングでバンドは活動休止を発表。そこから活動を再開するまでの約二年で彼等は伝説のバンドとして語られるようになった訳だが、そんな現在のシーンに多大なる影響を与えた彼等がいよいよこの夏ここ日本へやってくる。今作はその来日を記念してのリリースとなる訳だが、何よりも嬉しいのは再始動後初となる2014年リリースの最新EP「Further Sky」がそのまま収録されている事。まさにこのタイミングでパーフェクトなリリースといえる。
本編「Colourmeinkindness」は最早レビューするまでもない程の名盤。Hüsker DüやSonic Youth、Dinosaur Jr.を始めUSオルタナティヴが隆盛を極めた80年代のバンド達。そこから90年代に派生したNirvana、Soundgarden、Pearl Jamといったグランジと括られるバンド達の台頭。そしてこれらとハードコアシーンがエモへ移り変わり始めた2000年代初頭。この約20年間全てのオルタナティヴ・ミュージックの要素をただリバイバルさせただけでなく、前述の通りしっかりと今の感性で融合した事により、温故知新的意味合いと新鮮さという二本柱で鳴らした彼等の音楽は当時を知らない若き世代の心も掴んだのだろう。そして注目された最新EP「Further Sky」もまた、オルタナティヴミュージック最新型が詰まっている。どこか滲み出るUK感と清涼感あるコード進行を見事に融合した “Summer’s Colour”。パワーポップ調のリズミカルなサウンドから一気に退廃的な展開を聴かせる “Jet”。そして、これまた夏らしく清々しいメロディーラインと等身大のメロディーラインとコーラスが胸を打つ “Animal Nitrate” と、グランジ感だけでなくさらにメロディーに比重の置かれた楽曲が収録されているのが印象的だ。
海外では全曲大合唱が巻き起こる程に熱狂的なファンの多い彼等のLiveが、いよいよこの眼で見る事が出来るかと思うと今からかなり楽しみ。是非この世界最高峰、最先端のオルタナティヴ・ミュージックを肌で感じて欲しいと思う。間違いなく生で聴くと新たな景色が映るはずだ。
テキスト:Yuji Kamada