【REVIEWS】Prawn – Kingfisher 〜 インディーとエモの共通する良質な唄心 〜
Released:8/12/2014 – Topshelf
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2007年に米ニュージャージー州にて結成された彼等は、結成7年のこのタイミングで最高の瞬間を迎えている。自主で数枚のデモを発表後、2011年には1stフル作「You Can Just Leave It All」をリリース。この作品で超早耳なインディー/エモ・リスナーから注目された後、現在所属しているTopshelf Recordsと契約。同作をヴァイナルで再リリースした2012年、新EP「Ships」を発表。これまたVinylとダウンロードだけの販売ながら、多くのリスナーを虜にしたのも記憶に新しい。その後も4way Split作を挟み、2014年に入るとその活動は加速。2月にはSTIFF SLACKから国内盤もリリースされていたJoie De VireとのSplitを、そしてそこから僅か半年で約3年振りとなる最新作が発表された。
ポストロックの持つミニマルで繊細な単音リフを活かしつつも、バンド特有のダイナミズム、そしてTonyの純朴でエモーショナルなボーカルが合わさるという彼等らしさは全く損なわれる事無い。穏やかにスタートし、トランペットの音色も入りながら徐々に熱を帯びていく“Scud Running”。テクニカルでマス要素全開のリフ、直情感の強い疾走が最高に気持ちいい “First As Tragedy, Second As Farce”。同じく疾走感ありながら、エバーグリーンさと内向的なメロディーラインがたまらない “Thalassa”。力強くも、弧を描くようなアンサンブルと優しさが溢れまくりの “Dialectic Of…”。そして朝方や夕暮れを彷彿とさせる、まさにエモの王道ともいえるサウンドスケープとツインボーカルの掛け合いに思わず息をのむ “Glass, Irony”。全体的に相変わらずナードである事は間違いないのだが、このシーン界隈のリスナーだけで聴かれるのはあまりにも勿体ないほど。是非Taking Back SundayやDriver Friendlyの最新作辺りの世界観を好むリスナーにも届いて欲しい、(直接的な意だけでなくリフやコーラスワークも含め) 唄心が詰まった一枚だ。
テキスト:Yuji Kamada