【REVIEWS】Empire! Empire! (I Was a Lonely Estate) – You Will Eventually Be Forgotten 〜 遂にリアルタイムとリバイバルを繋いだ一枚 〜
Released: 8/19/2014(国内盤9/12) – Count Your Lucky Stars / Topshelf / Stiff Slack
AltPress.jp Rating:
2006年に米ミシガン出身のKeith Latinenのソロプロジェクトとして立ち上がり、妻のCathyとの夫婦デュオとなった彼等は、これまでの活動で90’sエモリバイバルというムーブメントを大きく牽引してきた。ここ日本でもヒットを記録し、コア層のみならず多くの耳の肥えたリスナーにその存在を知らしめた大名盤1stフル作「What It Takes To Move Forward」は国内盤化。さらに入手困難なEPやSPLITからの音源をコンパイルした「Middle Discography」も国内盤としてリリース。その後も2011年から2013年にかけて凄まじい数のSPLITやEP、7inchを発表し続けてきた訳だが、ここにきて遂に約5年振りとなる2ndフル作をリリース。レーベルは前作と変わらずワールドワイドはCount Your Lucky Stars Records / Topshelf Records、国内盤はStiff Slackとなる。
Keithの変わらぬ永遠のイノセンスを感じる唄声が響く “Ribbon” から静かに幕を開け、90’sエモの王道ともいえる物悲しくも温かいアルペジオが全体を支配する “I Was Somewhere Cold, Dark… And Lonely” では、タイトルだけでもいきなりエモーションが零れ落ちていく。このアルペジオとローファイなプロダクションこそ同シーンの真骨頂ともいえる訳だが、何作発表しても彼等はここに関して一切のブレはない。その事は “We Are People Here. We Are Not Numbers” や “Stay Divided” を聴いても明らか。そしてKeithも過去にインタビューで語っていたが、リバイバルといってもその一派から派生した新たなニュアンスはそこかしこに散りばめられている。それを過去最高に感じさせるフレーズが盛り込まれた “Fixfire” もまた至極の名曲だが、何よりも今作のトピックとなるのはKeithが憧れてやまない伝説のバンド達のフロントマンが二人参加しているという事だろう。“A Keepsake” でそのいぶし銀すぎる唄声を響かせるのは、約15年振りのニューアルバムをリリースしたBraidのフロントマンBob Nanna。さらには今年4月に再結成を発表し、9月には結成20周年ツアーを行う事を発表したMineralのフロントマンChris Simpsonも参加。彼は今作同時期に自身のソロプロジェクトZookeeper名義でも新作をリリースしているので、こちらも是非チェックを。
未だ90’sエモリバイバルの中核はここである事は間違いない訳だが、それ以上にこうして過去と今が一つの作品上で結ばれた事はとても意義がある。その事実を噛み締めながらこの興奮を確かめ、そっと胸にしまいたくなる一枚だ。
テキスト:Yuji Kamada