【REVIEWS】Piano – Salvage Architecture 〜 6年に込められた深き想い 〜
Released: 9/17/2014 – ZESTONE
深い、どこまでも深くその底は全く見えない程に果てしない。2005年、2008年と二枚のEPが国内盤化され、真のポストハードコアファンから絶賛されたUK産。先日奇跡の来日を果たしたSIKTHのメンバーらがお気に入りと発言した事で一躍その名前が日本に広まり、二度の来日も経験。しかしながら、その後バンドメンバーの仕事の関係でバンドはほぼ活動休止状態。個人的にも非常に好きなバンドだっただけにこのまま自然消滅なのかなぁ、なんてセンチメンタルな気分になっていたが、何と彼等はずっと作曲をしていたそうだ。そして前作から6年、いよいよバンド史上初となるフルアルバムがリリースとなる。
現在のポストハードコアというとエレクトロが入っていようがゴリッゴリのメタルコアだろうが、スクリームとクリーンパートさえ入っていれば全部ポストハードコアとして括られがちだが、本来は現在でいう所のEmarosaやCirca Survive、Dance Gavin Dance辺りの音がポストハードコアと呼ぶべきサウンド。プログレッシヴでエクスペリメンタル。スクリームではなく美しくもエモーショナルなメロディーパートがメインとなるサウンドだ。そしてこのPianoもまた間違いなくその系譜にあるといえる。しかし、前述の米バンドとは一味も二味も違う圧倒的なスケール感を持ち合わせているのが彼等だ。アトモスフェリックで浮遊感抜群のイントロからジワジワと壮大なサウンドスケープを展開していく冒頭の “INSPIRE” でいきなり受け止めきれるはずもない程のエモーションに襲われ、続く対極ソング “EXPIRE” ではDjentバンドも真っ青な超絶テクニカルを持ち合わせながら、アート過ぎる一大プログレ絵巻が展開。ポストハードコア、ポストロック、マスロック、ジャズ、プログレ…etc、彼等の音楽的バックボーンは僕等が考えている以上に数多いのだろうが、どの曲も美しく、儚く、しかしインテリジェンスに溢れている。ただ6年かけただけでは決してこれほどの作品は出来なかったであろう。ポストハードコアというものが何なのかを再度思い出させてくれるだけでなく、その先の景色も見せつけてくれる傑作だ。
テキスト:Yuji Kamada