【REVIEWS】Finch – Back To Oblivion 〜 9年を経て辿り着いた最新型 〜
Released: 10/15/2014 – Universal / Razor & Tie
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デビュー作「What It Is To Burn」のリリース10周年を皮切りに再び始動した彼等が、2nd「Say Hello To Sunshine」以来9年振りとなる最新フルアルバムをドロップした。2008年に「Finch」、2009年にLive盤「A Far Cry from Home」、2010年に「Epilogue」とコンスタントに三枚のEPをリリースしていたものの、この時点での彼等の歩みはとてもマイペースであり、正直フルアルバムがこうして聴けるとは思ってもいなかった。それだけに感動に打ち震えると同時に、これまでの彼等の余りある音楽的引き出しがこの長い年月の中でさらにどう増え、それをアウトプットしてくるのか非常に楽しみでもある作品であった事は間違いない。
結果から言えば、これまでのどの作品とも異なりながら過去最高にFinchらしい一枚だ。ここ9年の間に忘れ去られた記憶を呼び起こす様な壮大でメジャー感溢れたタイトルトラック “Back To Oblivion” で幕を開け、無機質ながら耳にこびりついて離れないリフが聴き手を煽動する “Anywhere But Here”。オルタナティヴに疾走していく中、Nateの強烈なスクリームが耳をつんざく “Further From the Few” や “Two Guns To the Temple”。穏やかで美しいメロディーからストリングスを擁した広大な展開を鳴らす “Murder Me”。彼等が敬愛するDeftones直系のニュアンスを持った “Picasso Trigger” といった「Say Hello To Sunshine」に通じる楽曲も収録されているが、サビが明らかにキャッチーだったり。かといって「What It Is To Burn」と「Say Hello To Sunshine」の中間に位置付けられるかと言うとまた違い、過去の焼き回しになっている曲は一曲もないのだ。ポップネスとアーティスティック、その相反する要素を過去二作でそれぞれ表現した彼等が9年という歳月を経て辿り着いた、水と油の共存。そして何よりもFinchというバンドとして全くブレない所に僕等はまた魅了されるのであろう。
スクリーモ/ポストアードコアのパイオニアとして長い事語られてきた彼等がそのジャンルを飛び越え、いよいよこうして「いちロック・バンド」 として歩み始めた。
テキスト:Yuji Kamada