【REVIEWS】Weezer – Everything Will Be Alright In The End 〜 初期衝動と成熟を融合させた大傑作 〜
Released: 10/1/2014 – Universal / Republic
今やパワーポップ/オルタナ・シーンを飛び越え、アメリカを代表するロックバンドとなったWeezer。2008年「Weezer(通称Red Album)」、2009年「Raditude」、2010年「Hurley」と、直近3作は一年毎にリリースされ活発にバンドも動いていたイメージがあったが、その後バンドは次なる作品に向けてじっくりと時間をかける事を選択した。レコーディング自体は今年の頭からだったものの、こうして完成した作品を聴けば分かる通り、楽曲や作品の構想は確実に時間をかけて練られた事が功を奏した素晴らしい作品だ。プロデューサーには1994年デビュー作「Weezer(通称Blue Album)」と2001年リリースの3rd「Weezer(通称Green Album)」という、キャリア史上伝説の名盤と誉れ高い二枚を手掛けたThe CarsのRic Ocasekが手掛けている。これだけで初期からのファンは眉唾モノではあるが、その期待に漏れず素晴らしい手腕を担っているのだ。
「Weezer(通称Green Album)」に収録されている代表曲 “Hash Pipe” を彷彿とさせるイントロに思わずニヤリとさせられる “Ain’t Got Nobody”。あの当時のWeezerが現在のモダンなプロダクションで録音した様なパワーポップアンセム “Back To The Shack”。Ric Ocasekの手腕が最も活かされたエバーグリーンなポップネスが炸裂した “The British Are Coming”。新世代USインディーシーンで最も影響力のあるバンドの一つであるBest CoastのBethany Cosentino嬢が甘酸っぱいボーカルを聞かせ、同バンドのBobb Brunoがギターを弾いた “Go Away” や、Titus AndronicusのフロントマンであるPatrick Sticklesがギターを弾いた “Foolish Father” 等、人選も相変わらずツボを付く。紛れもなく全体を支配する空気感は初期そのものなのだが、デビュー時から20年経ったバンドだ。気弱そうでナード、繊細でシニカルな絵に描いた様な弱虫君が頑張ってロックを始めましたという感じはどうしても薄れて仕方ない分、ボトムはしっかりと円熟味を増し、それでもこの初期の空気感を壊さないで完成させたのは見事の一言だ。敢えてこの作品をセルフタイトルにしない辺りも、彼等らしいと言えば彼等らしい。
テキスト:Yuji Kamada