【REVIEWS】Set It Off – Duality 〜 最先端シアトリカル「Soul」ミュージックがここに 〜
Released: 10/22/2014 – KICK ROCK INVASION / Equal Vision
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My Chemical Romance以降幾多のバンドが登場したが、ここまで圧倒的なバンドがいただろうか。そのダークでファンタジックな世界観を見事なまでにキャッチーなメロディーと融合したサウンドで一気に注目を集めた米フロリダ産が、デビュー作に続き待望の2ndフル作を発表。BEYOND[THE]BLUE Tour 2013での初来日時にその圧倒的すぎるパフォーマンスで会場を狂喜乱舞させた事も記憶に新しいが、そんな日本のファンは勿論、世界中のファンが待ち焦がれた一枚である。当初はThe UsedやStory Of The Year、ONE OK ROCKを手掛けたJohn Feldmannがプロデュースを手掛ける予定だったが、一身上の都合で離脱。結果John Feldmann周りで作業をしていたBrandon Paddock、Tommy English、Matt Appletonという数人のプロデューサーと共にレコーディングされたのだが、これが功を奏し非常にカラフルでバラエティーのある作風に。しかもしっかりと統一感が出ているのは、バンドが今作へのビジョンをしっかりと持っていたからだろう。
深い闇に包まれた森から抜け出していくような、シアトリカルの王道ともいえる世界観にスケール感まで加え、よりドラマティックなサウンドスケープを構築した “The Haunting”。ファンタジックなストリングスとコーラスワーク、ダンサブルなリズム、エモーショナルなメロディーを融合した “N.M.E.”。スイングしまくるシャッフルビートとクレイジーパターンのホーンが気持ちいいビッグバンド風のタイトルトラック “Duality”。こうして前作からの世界を踏襲した楽曲を配置しつつ、続く “Forever Stuck in Our Youth” では粘りまくり&腰が入りまくりなR&Bサウンドでリスナーのド肝を抜き、リード曲になった “Why Worry” ではリズミカルなビートとゴスペル要素を彼等ならではの世界観と見事に融合。さらに “Ancient History” ではバンドがフェイバリットであげるAll Time LowやWe The Kingsといったバンドを彷彿とさせる爽快なサウンドを鳴らし、“Bleak December” や “Bad Guy” ではOne Directionレベルのポップネスまで披露。“Wolf in Sheep’s Clothing” ではex-The Academy Is…のWilliam Beckett、“Tomorrow” ではex-Go RadioのJason Lancasterが参加しており、客演も楽曲のイメージに合ったチョイスだ。
全体的に、もはやエモやパンクといった範疇で語るべきではない程のクオリティーを誇るポップスをロックというフォーマットの上で披露していると同時に、異常なまでに表現力と歌唱力がアップしたCodyのボーカルの存在感はまさにソウルミュージックレベル。昨今のFall Out BoyどころかMaroon 5やBruno Marsすらも頭を過る程の高い完成度だ。シアトリカルという世界観を大々的に広めた先駆者は、既にもうその遥か彼方を見据えている。
テキスト:Yuji Kamada