【REVIEWS】Pianos Become The Teeth – Keep You 〜 美しき陰影に彩られた大いなる深化 〜
Released: 10/28/2014 – Epitaph
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Touché Amoré、La Disputeと並び現在のポスト激情界隈最重要バンドの一角として熱い視線を集める米バルチモア産。2011年にリリースされた前作「The Lack Long After」で一気にその独自のアート感に磨きをかけた彼等が、何とTopshelf からEpitaphへ移籍。そのタイミングに相応しく、さらなる深遠さを手に入れた三枚目となる最新作を発表した。静と動、緩急あるエモーティヴなバンドサウンドが洗練されたのも何よりだが、全編を通して最も驚かされるのはそのボーカリゼーションだろう。
Engine Downを筆頭としたあの頃のLovittの雰囲気すら感じる、刹那の中にどこかヒリヒリとした焦燥感を感じさせるギターのリフで幕を開ける “Ripple Water Shine”。絶望の先にしか見うる事の出来ない真っ白な情景をUKロックの様な繊細で広大なサウンドスケープで描く “April”。サンディエゴやDC辺りのインディーロックを彷彿とさせる、無機質/無表情だからこそ聴き手の感情やイマジネーションを揺さぶる “Late Lives” や “The Queen”。どの曲もDenali辺りの絶望感はないが、虚無感という切り口で聴き取ればこれ以上無い程にエモーショナルだ。そしてどの曲も徐々に熱を帯びていく様な楽曲展開に絶句させられるが、特にラスト “Say Nothing” でのOwenばりに美しいパートからゆっくりと雄大に広がっていく構成にはただひれ伏すのみだ。自身の感情を悲痛なまでに叫ぶ、俗にいう激情の王道ともいえたKyleの歌唱法は今作全ての楽曲で「叫ぶ」から「唄う」へ変化。その事で元来激情シーンの中でもカオティックというよりはエモーショナルなサウンドを鳴らしていた楽曲は、より鮮明なモノクロームとしてこの作品に記録された。文句の付けようの無い程にアーティスティックで美しく、儚く、虚無が木霊する最上級の一枚だ。
テキスト:Yuji Kamada