【REVIEWS】Such Gold – The New Sidewalk 〜 ファストに、プログレッシヴに、また後続を突き放す 〜
Released: 11/22/2014 – ICE GRILL$ / Razor & Tie
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決して大衆性はないかもしれないが、ポップパンク、メロディックハードコアの好きなリスナーは間違いなく聴いた方が良い一枚が完成した。ワールドワイドで発表された初期の二枚のEPから国内盤化され、これまでICE GRILL$による二度の来日ツアーで確固たるファンベースを築き上げてきた米ニューヨーク産。コア層ライト層関係なく、今最も熱い注目を集め続けているバンドの一つである彼等の2ndフル作が発表だ。前作ではAt The Dive-Inにも通じる激情と直情感を持ちながら、絶妙なオルタナティヴさとプログレッシヴさを前面に打ち出しアーティスティックな方向を向いていただけに、新作はさらにその要素を強めてくると予想されたが良い意味で裏切られる内容だ。
プロデューサーにはDESCENDENTS/ALLのメンバーであり数々の殿堂入りパンク作品を手掛けてきたBill Stevenson。彼の起用もまた多少の影響があったのではと勘繰ってしまう程、前作の路線の様にとにかく熱くプログレッシヴである事に変わりはないながらも、要所要所ストレートかつ圧倒的に洗練された印象を受ける。まさにメロディックハードコアの王道ともいえるオーセンティックな疾走の中に、テクニカルなフレーズと展開を入れ込んだ “Engulfed In Flames”。ポップパンクの持つ青空感をメジャーのスケールで表現しながら、タッピングが盛り込まれまくった “Faced”。途中Dream Theaterばりの超プログレッシヴなユニゾンパートに悶絶させられる “No Cab Fare”。こうした一曲一曲に詰め込まれた情報量も尋常ではないが、ファストに駆け抜ける “No Cab Fare” からオルタナティヴにどっしりと展開する “I Know What I Saw” の様な楽曲まで全体の起伏の付け方も練りに練られている。
A Wilhelm ScreamやStrike Anywhereといったメロディックハードコアバンドから最近復活を宣言したThe Fullblastを筆頭としたテクニカルなパンクバンド辺りのファンには間違いない音ではあると思うが、普段そういうパンクを聴かないリスナーにも是非聴いて欲しい。文頭ではあのように書いたが、既成概念やらなんやら、必ず自分の中の何かが一つ叩き割れる音も聞こえるはず。正に唯一無二。
テキスト:Yuji Kamada