【REVIEWS】Circa Survive – Descensus 〜 妖艶ユートピア、ここに極まり 〜
Released: 11/24/2014 – Sumerian
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最早説明不要だがSaosinの初代ボーカリストであり、シーン屈指の「神の声」を持つAnthony Green率いるCirca Surviveが結成10周年となる節目の年にリリースする5枚目の最新作。2012年に発表した前作「Violent Waves」は、自主制作でのレーベル未契約リリースにも関わらず全米ビルボード初登場15位を記録するなど圧倒的なファンベースを築いてきた訳だが、2014年に入りSumerian Recordsと契約。同作をDVD付きでリイシューした僅か二ヶ月後にこの新作が届けられた。Title Fight やMan Overboard といったパンクバンドからLa Dispute やCold World といったハードコアバンド、そしてTigers JawやDaylight等のインディー/オルタナバンドの作品を手掛け、これまでのCirca Surviveの作品も手掛けてきた Will Yipが今作もプロデュース。結成から10年、メンバーが一人もチェンジする事無くこれまで歩み続けてきたバンドと共に、円熟を感じさせる一枚をここにまた産み出した。そして過去の作品を手掛けたEsao Andrewsによるアートワークも相変わらず素晴らしい。
衝撃的なPVで話題となったリード曲“Schema” から作品は幕開け。彼等の処女作である「The Inuit Sessions」に収録されている “Handshakes at Sunrise” に通じるドラムの入り方をする “Child of the Desert” では、聴き手に蜃気楼を目の当たりにさせる様なサウンドスケープで揺さぶったかと思えば一気に耳をつんざくようなスクリームも披露。ジャムりながら始まったか様なフリースタイル感溢れたイントロから、力強いリズムで展開していく“Always Begin”。ジャジーな雰囲気でスタートしながらアンビエントに変化していく “Phantom”。そして個人的に一番絶句させられたのは、7分弱かけてSigur Rosばりにじっくりとゆっくりと真っ白な世界へ帰化していく様な感覚に苛まれ、ただただ脱力するしかない “Nesting Dolls”。よりバンドサウンドでスケール感溢れ、オルタナティヴに鳴らされるラストの “Descensus” も9分弱の大作プログレッシヴ楽曲だが、こうした楽曲をここまで聴き手に飽きさせず聞かせられるのは間違いなく彼らしかいないだろう。本国では神格化されるほどのバンドであるにも関わらず、ここ日本ではこうしたアトモスフェリックなサウンドは非常にニッチな存在として認知されてしまっている事が残念でならない。
テキスト:Yuji Kamada