【REVIEWS】Fall Out Boy – American Beauty / American Psycho 〜 ロックバンドとしての地位を確立する新作 〜
Released: 1/21/2015 – Universal / DCD2 / Island
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2013年に発表された前作「Save Rock and Roll」がビルボード1位を獲得。華麗な復活を遂げただけでなく、その変わらぬ圧倒的人気をシーンに叩きつけたバンドの約二年振りとなる最新作がリリース。初期は完全なポップパンクバンドからキャリアをスタートさせてきた彼等だが、活動休止前の4作目「Folie à Deux」辺りから、バンドが本来持つポップネスやブラックミュージックの敬愛っぷりがフォーカスされ始めてきた。そして今作はその一つの集大成とも捉えられる、ロックバンドというフォーマットや既存の概念に縛られる事無く、メンバーそれぞれが持つ多くの引き出しを全開にしたさすがというべき作品に仕上がっている。
先行で公開された “Centuries” では、普遍的ながらダイナミックかつ哀愁感ある耳に残るメロディーが施され、続いて公開されたタイトルトラック “American Beauty/American Psych” は完全に振り切れたダンサブルナンバー。同曲はMotley Crüeの楽曲にインスパイアされているとメンバーが答えているが、このテンションに思わず納得させられる。そして新作から3rdシングルとなった “Uma Thurman” は、これまたエレクトロを交えたダンサブルな楽曲かと思わされる冒頭から、一気にレトロでGS感満載のリフとロックンロールが融合。その他にも、彼等特有の横ノリなグルーヴが様々なアレンジメントで消化された “Irresistible” や“Jet Pack Blues”、“Fourth Of July”。インディーロック感をそこかしこに散りばめた “The Kids Aren’t Alright”。こうしたメンバーが表現したいと練られた多彩すぎる要素を、前作のエンジニアを務めたJake Sinclairを始め、J.R. Rotem、Omega、SebastiAn、Butch Walkerといった多くのプロデューサーが具現化したサウンドメイクも見逃せない。
またここに確固たるFall Out Boyにしか鳴らす事の出来ないながらも、次のヴィジョンも見え隠れする一枚が完成した。
テキスト:Yuji Kamada