【REVIEWS】Periphery – Juggernaut: Alpha / Omega 〜 現代最高峰、最高ボリュームのプログレ超大作 〜
Released: 1/27/2015 – Sumerian / TRIPLE VISION
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SCREAM OUT FEST 2014にて初来日。その圧巻すぎるパフォーマンスでファンの高き予想すら軽々と超越し、その場にいたオーディエンス全てを吹き飛ばした事も未だ鮮明に思い出せる、米メリーランド出身6人組。メタルの未来と称されたデビュー時の揶揄は、もはや陳腐になるほどに世界を蹂躙。今やメタルを飛び越え、全てのエクストリームミュージックの頂点に手をかけようとしている彼等がリリースするニューマテリアル。2014年頭には、メンバー6人が自由にそれぞれのスタイルで1曲ずつ手掛けた楽曲を収めるという、コンセプチュアルな作品「Clear」をリリース。にもかかわらず、今回届けられたのは何と二枚のアルバムである。その制作意欲も凄いが、なによりもその頭にあった構想をこの短期間でアウトプット出来てしまうスキルに脱帽させられる。「Juggernaut: Alpha」、「Juggernaut: Omega」と名付けられたこの二枚のアルバム。止めることのできない巨大な力、圧倒的な破壊力という意味を持つJuggernaut。そして元来、聖書の中で使われた万物の最初と最後を意味するAlphaとOmegaを冠したフルボリュームな二枚だ。
物語の冒頭から中盤、人物や物語の背景がコンセプトとなったAlphaではまさに世界のプロローグ的に幕を開け、徐々に力強く展開していく “A Black Minute” からスタート。続く “MK Ultra” では、これぞPeripheryの真骨頂と言えるスリリングかつ圧倒的なテクニックが大爆発。同曲ラストのフュージョンパートから繋がっていく “Heavy Heart” では、SpencerがまるでGlassjawのDaryl Palumboばりに粘着的なボーカリゼーションを披露し、新たな表情をみせる。そしてタイトルトラックである “Alpha” では8bitなエレクトロから一気にオーセンティックなハードロックのリフが展開。これだけのテクニカルを持ち合わせているにも関わらず、彼等は馬鹿テクのミュージシャンにありがちなエゴに塗れる事無く、きちんと唄モノとして成立させる所はさせるという、素晴らしいバランス感覚を持ち合わせている辺りもモンスターなのだと再認識させられる。無論、絶望と混沌を想起させるインストナンバー “Four Lights” をはじめとした極上のシンコペーション感を始め、圧巻のテクニックを堪能できる楽曲も多数収録されている。
そして中盤からエンドロールまで、複雑な冒険の旅を表現したというOmega。深い深い静寂から、嘆くように、そして縋るように唄い始める “Reprise” から、ダークかつアグレッシヴに転調する “The Bad Thing”。ブルージーなアコースティックサウンドが印象的な “Priestess”。ファストな “Graveless” から超へヴィな “Hell Below”。そして12分弱のプログレ地獄絵図 “Omega” では、壮絶なテクニックとあり得ない運指を駆使した展開が繰り広げられていく。
正直作品の持つ本当の意味を知るには、もっと長い時間をかけて咀嚼しなければならない事は否めず完璧なレビューには程遠く申し訳ないが、総体的には苦悩や葛藤というレベルではない、悲劇と精神世界を行き来している様な錯覚に陥る化け物作だ。
テキスト:Yuji Kamada