【REVIEWS】The Bad Chapter – Cheers To The Down And Outs 〜 シーンを渡り歩いたボーカリストの新章 〜
Released: 3/17/2015 – InVogue
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初代ボーカリストAustin Carlileが現Of Mice&Men。現Brightwellでありex.For All We KnowのNick Barhamを挟み、2ndリリース時からは現BeartoothのフロントマンCaleb Shomoがボーカリストを務め二枚の作品をリリースした米スクリーモ/メタルコアバンドAttack Attack!。そのCaleb Shomoがバンドを脱退し、バンド解散まで最後のボーカリストを務めたのがPhil Druyorだ。彼が加入後に新曲が発表され4枚目の制作も進んでいたのだが、結局バンドが途中で解散してしまった為、僕等にその作品が届く事はなかった。このPhilは、Attack Attack!に加入する前にはここ日本でも国内盤化されていたI Am Abominationのフロントマンであった事は有名な話だが、その彼がようやく新たなバンドを引き連れてシーンへ帰還した。2014年に結成され、フリーダウンロードでデビュー曲 “Deal With The Devil” を発表。即話題となり、同年末にはBefore Their EyesのNickが運営するINVOGUEと契約を果たした。
元々メロディーパートもスクリームも得意なPhilだけにどちらも活かした方向性のサウンドにはなると予想されてはいたが、それにしてもそのレンジは広い。唄を重視したポストハードコアを軸に、俗にいう昨今のポストハードコアのニュアンスは混ぜつつも一味も二味も異なる世界観を展開。どこかデカダンなニュアンスを持った “Pipe Dreams” から幕を開け、一気にモダンなニュアンスのエレクトロとリフで奥行きを持たせる “HellKat” へ。元々低音からエモーショナルな高音までを変幻自在に操る事の出来るボーカリストであったPhilだが、このバンドでは “Don’t Save Me” やキーボードが楽曲を引っぱる “The Lowdown” 辺りで聞く事が出来る様なソウルフルな歌唱法も披露。その他にもBreath Carolina辺りを思わせるエレクトロにブルータルなサウンドが交錯していく “Lawsuit And Tie”。Set It OffやPanic! At The Discoを彷彿とさせる “Cheers To The Down And Outs”。ニューメタルっぽいリフが楽曲を煽動する “Puppeteer”、“Here’s Your Song” といったブルータルさを持った楽曲も収録されている。しかしながら、その分まだこのThe Bad Chapterというバンドの世界観は完全に確立されていないようにもとれる。Philのボーカリストとしての存在感や実力を堪能するには充分な作品ではあるが、各楽曲がさらに耳を引きつけるものとなればさらなる高みへ到達する事だろう。
テキスト:Yuji Kamada