【REVIEWS】As It Is – Never Happy, Ever After 〜紛れもない2015年、ポップパンク最強新人〜
Released: 4/22/2015 – KICK ROCK INVASION / Fearless
AltPress.jp Rating:
Drive-Thru隆盛以降も、All Time LowやHit The Lights、Four Year Strong、Set Your Goals、Valenciaといったバンド達が開拓していったUSポップパンクシーンは、現在The Wonder YearsやThe Story So Far、State Champsといったバンド達によってさらなる広がりを見せている。そして、それに呼応するようにUKでもSave Your BreathやMe vs HeroがUS直系のサウンドで自国のリスナーを開拓。そのバトンが、米Hopeless Recordsと契約後に凄まじい勢いとなっているNeck DeepやRoamといったバンドへ渡されている状況になっている。Hopelessとは友好的なライバル関係ともいえるレーベルと言えばFearless Recordsだが、このレーベルもまた現在Real Friendsを筆頭にポップパンク新世代組へ注力している事は間違いない。そんな中、早耳ポップパンクリスナーの間で話題騒然となっていた、またしてもUK産のバンドとの契約を果たした。
2012年、同じ大学だったボーカルのPattyとギターボーカルのBenが出会いバンドがスタート。同年に「Two Track EP」、2013年に「Blenheim Place EP」とそのアコースティック盤をリリース。そして2014年には2本のツアーを敢行。夏前にはRoamとLight You Upという今考えればかなり豪華なメンツでのツアーを行いながら、その名を世界中に知らしめた「This Mind Of Mine EP」が発表された。ツアーと作品の大きな反響によって前述のFearless Recordsと契約を果たし、満を持して発表されたのがこのワールドワイドデビュー作であり、バンド初のフルアルバムである。プロデューサーはこれまでParamore、Hands Like Houses、Underøath、There for Tomorrow、Go Radio、Run Kid Run、National Productといった、ジャンルレスに良質な作品を手掛けてきたJames Paul Wisner御大。もっと現行のポップパンクを手掛けているプロデューサーをチョイスをしてくるかと思っただけに少し意外ではあったが、作品を聴けば分かる通り今までのバンドの作品とは異なる、勢いだけで突っ切る事のない、ポップパンクではありながらしっかりとした唄モノの作品になっている。
青い空に手を伸ばすように、声高らかにスタートする “Speak Soft”。2ndシングルになった “Cheap Shots & Setbacks” では、清涼感ありながらも多重コーラスを使いエモーショナルな展開。ツインボーカルを活かして疾走する “Sorry” や “Concrete”、“Turn Back to Me”。前作からの再録曲 “Can’t Save Myself”。そしてどこからどう聴いても2015年最強のアンセムとしか言いようのない1stシングル “Dial Tones”。バンドが最も影響を受けたというThe Starting LineやNew Found Glory、The Early Novemberといった当時のDrive-Thruのバンド達からの影響を公言するバンドは、彼等も然り新世代のバンドでは決して珍しくないのだが、それを現行感をそこまで強めない唄モノのベクトルでしっかり鳴らせるバンドはそういない。それを強く感じさせる “Drowning Deep in Doubt” や “My Oceans Were Lakes”、“Silence (Pretending’s so Comfortable)” といったミッドテンポ/バラードの曲からは、そこらのUSバンド以上にアメリカのルーツを滲ませるのだ。
良い曲が書けるバンドはドンドンとメロディーを活かしたサウンドをやればいい。そんな才能を持ったバンドは一握りなのだ。そこにこのデビュータイミングから気づいた彼等の未来は間違いなく明るく、だからこそ既にこれだけ注目されているのだ。
テキスト:Yuji Kamada