【REVIEWS】Superheaven – Ours Is Chrome 〜現代に再びグランジを蘇らせる〜
Released: 5/6/2015 – ICE GRILL$ / SideOneDummy
AltPress.jp Rating:
2013年には初来日も果たしたご存知Daylightが改名後初となる新作をリリース。Side One Dummyとの契約はTitle FightのAnti-ばりに驚いたが、元々のレーベルの抱えるバンド達の幅広さや懐の深さを考えれば充分に頷ける。2008年結成してしばらくは渋くもエモーショナルなメロディックハードコアを奏でていた米ペンシルバニア産は、作品を重ねるごとにオルタナティヴさを増し、前作「Jar
では一気にそのメーターを右へ。UKからはBasementが台頭し、世界中のシーンは一気にオルタナティヴのリバイバルに目を向け始めたのも僅かここ一、二年の出来事だが、その中心にいたのは彼らである事は間違いない。
今回も前作に続き、Will Yipがプロデュース。前作以上に一音一音のきめが細かくなっており、重なった時の分厚さや90年代のグランジリアルタイムのバンド達に比べればモダンだ。青い空の下でただただ脱力感に苛まれている様な “I’ve Been Bored” や “Next To Nothing”。まさにNirvana直系ともいえるクリーントーンと振り切らずに爆発するギターの対比が心地よい “Room”。同じくグランジの王道ともいえる、呪術の様に繰り返される起伏のないメロディーにも関わらず、そのアンサンブルによってリスナーの心を無にする “Blur”。メジャーコードとマイナーコードを共存させるその手法で、まさにあの当時を蘇らせる “Dig Into Me”。あまりの虚脱感に、ただただ立ち尽くすばかりのアウトロを持った “From The Chest Down”。
ハードコアをはじめとした直情的なサウンドとは一見対照的にあるかもしれないが、そこを通り、その先に辿り着いたものだからこそ共鳴出来るこの世界。ぶっちゃけ別に当時のグランジやオルタナティヴをリアルタイムで知らなくとも、オンタイムで知ろうとしなくとも良いと思う。だってこれは、針の先っぽで少ししか刺していないにも関わらず、あっという間に赤に染まってしまうくらいパンパンに膨れ上がった心臓を宿しながら、表情を外に出さずに生きているあなたのサウンドトラックなのだから。
テキスト:Yuji Kamada