【REVIEWS】Turnover – Peripheral Vision 〜エモ/ポップパンクを経て辿り着いた白昼夢〜
Released: 5/20/2015 – FLAKE / Run For Cover
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Title Fight、Such Gold、Superheaven (ex.Daylight)、Basement…etc、結成初期から奏でていたサウンドから音源を発表するごとにその世界観を変化させてきたバンド達。どのバンドもまた、これまでのロックの歴史を掘り起こし自分達のカラーを加える事によって、シーンの中でオンリーワンな存在感を確立するバンドばかりだ。そして2009年、米バージニア州で結成された彼等もまた、その存在を孤高のものへとする至極の一枚を完成させた。
2011年にリリースされた1st EP「Turnover」は現行のPop Punk要素全開の疾走感溢れたサウンドを披露し、2012年発表のCitizenとのSplit作で一気にエモーショナルな作風へ。現在所属するRun For Coverから2013年にリリースされた初のフル作「Magnolia」ではインディー感を強め、2014年リリースEP「Blue Dream」ではオルタナティヴさを増した。彼等のみならず、前述のバンド達全てに共通する変化はこのオルタナティヴさなのは間違いないのだが、正直続く新作でここまで一気にシフトチェンジしてくるとは予想していなかったリスナーが大多数だった事だろう。
今年の3月に先行でMVと共に発表された、新作からのリード曲 “New Scream” でのあまりにもドリームポップなサウンドは、きっとこのリード曲だけ異質なのだと思わざるを得ない程であった。しかしリリースされた今作を聴けばお分かりの通り、確実にネクストフェイズだ。荘厳な冒頭からDeath Cab For Cutieっぽいメロディーラインと軽やかなリフが混じっていく “Cutting My Fingers Off”。LowlifeからWild Nothingまで、世代を超えたドリーミーさを彷彿とさせる “Humming”。どこか退廃的な世界観と共に、リバーヴのきいた奥行きあるサウンドスケープがより儚いメロディーを際立たせる “Dizzy on the Comedown”。エモをポストしているからこそ、なアンセミックな旋律から一気に白昼夢全開なパートへ展開する “Take My Head”。空間と空間を印象的で美しきギターフレーズで紡いでいくバラード “Intrapersonal”。どの曲も甘美な世界観でありつつも安易にシューゲイザー寄りにせず、その儚くも流麗なメロディーをしっかり活かしたサウンドメイクを施したプロデューサー、Will Yipの底知れぬ才能にもため息が漏れる。
テキスト:Yuji Kamada