【REVIEWS】August Burns Red – Found In Far Away Places 〜世界最強メタルコア揺るがず〜
Released: 7/8/2015 – TRIPLE VISION / Fearless
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MAメタルがメタルコアという呼称となった辺りの2003年、米ペンシルバニアで産声をあげた彼等。バンドのデビュー作「Thrill Seeker」からTooth&Nailの別レーベルであるSolid Stateと契約。同作リリース後に二代目フロントマンとべーシストが脱退するものの、新メンバーを加入させリリースした2ndアルバム「Messengers」は初週で一万枚弱のセールスを記録し、一気にシーン最前線へ躍り出た。その後はメンバーチェンジもなく、Djentを始めとしてトレンドが目まぐるしく移り変わるメタルシーンにおいて、微動だにしない徹頭徹尾ABRサウンドを貫き5枚の作品をリリース。その圧倒的なアグレッションとぶれないサウンドは、強固なファンベースを確立し、2013年発表の前作「Rescue & Restore」ではBillboard初登場9位を記録している。そしてこの完全ブレイクタイミングで、遂に長年のパートナーシープを組んでいたSolid Stateではなく、新たにFearless Recordsと契約を果たし、移籍第一弾となる今作がリリースされた。
プロデューサーはホリデイ作品「August Burns Red Presents: Sleddin’ Hill」以降の二作を手掛けているex. ArmsBendBackのCarson Slovakから変わりはないのだが、今までのバンドの作品に比べると格段にレンジを広げた勝負作だ。ブラストビートを始めとしたデス要素を前面に出したまさにABR節といえる冒頭から、Mastodon直系の世界観すらも感じさせるパートを組みこんだ “The Wake”。同じくMastdon的な世界観を前面に出した “Ghosts” では、A Day To RememberのJeremy McKinnonがフィーチャー。その他にもメタルコアの強靭さを叩きつけながら、間奏では今までの彼等では想像もつかない弦楽器を取り入れた民族音楽的パートを取り入れた “Martyr”。まさかのGSやパルプフィクション的なパートを混ぜた “Identity”。ポルカやワルツのリズムを取り入れ、シアトリカルな世界観を演出する “Separating the Seas”。同じくポルカや牧歌的な要素を入れ込みながら、また異なる表情をみせる “Majoring In the Minors”。超モダンなスケール感を打ち出した “Broken Promises”。同期を取り入れたインストにド肝を抜かれる “Vanguard” 等々、全体像としては紛れもなくABRで間違いないのだが、要所要所ではこれまでのファンを良い意味で裏切る凄まじい多様性を持っている。これまで実直に自身のサウンドを追求してきた彼等だからこそ、このネクストフェイズ感とインパクトは凄まじい。
テキスト:Yuji Kamada